第2期(令和4年度から8年度) オーテピア高知声と点字の図書館サービス計画(案) 「みんなでつなぐ 読書バリアフリー!!」 令和4年3月 高知市              はじめに  高知市では,高知県・高知市が共同で整備した図書館等複合施設「オーテピア」の開館(平成30年7月)に伴い,同施設内にリニューアルオープンした「オーテピア高知声と点字の図書館」のサービスや取組について取りまとめた「オーテピア高知声と点字の図書館サービス計画」(第1期サービス計画:平成29〜令和3年度)を平成29年3月に策定しました。  このたび,第1期サービス計画の期間が令和4年3月末で終了することに伴い,次期計画である第2期サービス計画(令和4〜8年度)を策定しました。  第1期サービス計画では,オーテピアが障害や高齢など様々な理由で読書が困難な人も利用できるインクルーシブな施設となるように,併設のオーテピア高知図書館と連携・協力して様々な取組を進めてきました。リニューアルオープンに伴い新たに開始した録音図書再生機の貸出,福祉施設・特別支援学校への団体貸出や図書・再生機の郵送サービスの拡充など,様々なサービスを充実することにより,読書や図書館利用をあきらめていた多くの人に読書機会を提供することができました。  計画途中の令和元年6月には「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律」(通称:「読書バリアフリー法」)が施行され,図書館,点字図書館等においては読者が困難な人の読書環境向上へのさらなる取組が求められることとなりました.。.  第2期サービス計画は,第1期サービス計画の成果や課題を踏まえ,前計画と同様に,基本理念や基本方針,それに基づき実施するサービスやサービス実施のために必要な取組について策定し,障害,高齢,病気など様々な理由で読書が困難な方の読書や情報環境の充実を図ることを目的としています。  県内には障害,高齢等で読書が困難な人は数万人規模で存在し,読書をあきらめている人が多くいます。第2期サービス計画では,第1期サービス計画の取組を継続するとともに,「みんなでつなぐ  読書バリアフリー!!」をテーマに,県内の市町村図書館や読書が困難な人が関わることの多い教育・医療・福祉機関等と連携・協力して,より多くの読書が困難な人にバリアフリー図書やサービスを利用していただくことを取組の最重点項目としています。  また,高知市では,「障害のある人もない人も輝いて暮らせる共生社会」の実現を目指すとともに,国連の推進する「誰一人取り残さない」という理念に基づく「SDGs」(持続可能な開発目標:Sustainable Development Goals)の達成にも貢献していくこととしています。知識や情報へのアクセスを保障する読書バリアフリーの推進は,障害のある人が社会のあらゆる分野に効果的に参加することができる共生社会実現の重要な基盤となるものであり,また「SDGs」達成目標の「4 質の高い教育をみんなに」,「10 人や国の不平等をなくそう」にもつながるものです。  第2期サービス計画では,共生社会の実現やSDGsの達成に寄与するとともに,障害のある人の社会参加の促進や自己実現など,その人が自分の人生を生きていくことを応援し力になれるように「エンパワーメント」を意識し,様々なサービスや取組を進めていきます。  終わりに,この計画の策定にあたり貴重なご意見,ご提案をいただきました高知声と点字の図書館運営協議会の委員をはじめ,関係者の皆様に深く感謝いたします。  高知市長 岡ア 誠也 トピックス 雑誌「Precious(プレシャス)」2022年3月号(小学館) 特集【アイデアが光る!「SDGs×地方創生」注目の5TOPICS】に掲載されました。 記事概要:「ユニバーサルな姿勢で 誰ひとり取り残さない!」(オーテピア高知声と点字の図書館)  サービス内容の紹介の他,推薦者の推薦者の高木超先生(慶応大学大学院特任助教)からの「まさに”誰ひとり取り残さない“というSDGsの理念を,肌で感じられる場所です」のコメントも・・・。 目次 第1章 第2期サービス計画の策定にあたって   1 これまでの経緯 1ページ  2 次期サービス計画策定の趣旨・目的 2ページ  3 計画の期間 2ページ 第2章 第1期サービス計画の成果・課題  T「文字情報の利用が困難な人」の読書・情報環境の充実について  1 取組について 3ページ 2 アンケート調査等 7ページ  3 成果の評価と課題について 8ページ U 視覚に障害のある人の生活を支援する情報提供の充実について  1 取組について 11ページ  2 成果の評価と課題について 13ページ V 県民・市民との協働による読書・情報サービスの充実について  1 取組について 15ページ 2 成果の評価と課題について 16ページ 第3章 計画の基本的な考え方   1 基本理念 17ページ  2 基本方針 19ページ  3 計画の推進のために 20ページ 第4章 サービス・取組について T 「読書が困難な人」の読書・情報環境の充実  1 読書バリアフリーサービス 24ページ  2 みんなでつなぐ 読書バリアフリー!! 31ページ  3 成果指標と達成目標  35ページ U 視覚に障害のある人の生活を支援する情報提供の充実   1 サービス・取組について 36ページ  2 成果指標と達成目標 39ページ V 県民・市民との協働による読書・情報サービスの充実   1 取組について 40ページ  2 成果指標と達成目標 41ページ W 計画の実施及び点検・評価 42ページ 資料編 T 統計資料(平成29年度〜令和2年度) 43ページ U 計画策定の経過 46ページ V 読書バリアフリー法について 53ページ 〔目次、終わり〕 1ページ 第1章 第2期サービス計画の策定にあたって                          1 これまでの経緯  平成30年7月24日,高知県と高知市が合同で整備する新図書館等複合施設「オーテピア」の開館に伴い,高知市立高知点字図書館は「オーテピア高知声と点字の図書館」(以下「声と点字の図書館」という。)としてリニューアルオープンしました。声と点字の図書館は,県内全域を対象にサービスを提供する施設として,県市が連携・協力して施設運営を行っています。    声と点字の図書館では,開館前の平成29年3月に「オーテピア高知声と点字の図書館サービス計画(平成29から令和3年度)」(以下「第1期サービス計画」という。)を策定し,「文字情報の利用が困難な人の読書・情報環境の充実」や,「視覚に障害のある人の生活を支援する情報提供の充実」,ボランティア活動など「県民・市民との協働による読書・情報サービスの充実」を基本方針として,県内全域の障害,高齢,病気など様々な理由で読書が困難な方の読書や情報環境の充実を目指し,取組を進めてきました。    開館から2年を経た令和元年6月に「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律」(以下「読書バリアフリー法」という。)が制定されました。この法律は「障害の有無に関わらず、全ての国民が等しく読書を通じて文字・活字文化の恵沢を享受することができる社会の実現に向けて、視覚障害者等の読書環境の整備を総合的かつ計画的に推進する」ことを目的とするもので,図書館や点字図書館は地域における第一線のサービス提供施設として重要な役割を担うことが求められています。    第1期サービス計画では,読書バリアフリー法の制定に伴い,同法関連の国補助事業の活用などによりサービスの向上に努めてきました。しかし,令和元年度末から本格化した新型コロナ感染症の影響等もあり,新規利用登録者の減少など計画の目標を十分に達成できていない面もありました。次期サービス計画では,これまでの取組の成果や課題を踏まえ,より充実したサービスに取り組むこととします。 2ページ 2 次期サービス計画策定の趣旨・目的  平成29年3月に策定した第1期サービス計画の期間が令和3年度までとなっており令和4年3月末で終了することに伴い,次期計画である第2期「オーテピア高知声と点字の図書館サービス計画」(以下「第2期サービス計画」という。)を策定します。  第2期サービス計画は,第1期サービス計画の成果や課題を踏まえ,今後の施設運営の柱となる基本理念や基本方針,それに基づき実施するサービスや,サービス実施のために必要な取組について策定し,障害,高齢,病気など様々な理由で読書が困難な方の読書や情報環境の充実を図ることを目的とするものです。 3 計画の期間  第2期サービス計画の期間は,令和4年度から8年度までの5年間とします。  期間中において,計画の進捗状況,新たな課題,社会状況の変化などが生じた場合は必要に応じて計画内容の見直しを図るものとします。 3ページ 第2章 第1期サービス計画の成果・課題                第1期サービス計画では,「文字情報の利用が困難な人の読書・情報環境の充実」や,「視覚に障害のある人の生活を支援する情報提供の充実」,ボランティア活動など「県民・市民との協働による読書・情報サービスの充実」の3つを基本方針に掲げ、開館3年目からそれぞれ成果指標と目標値を設定し取組を進めてきました。 ※成果指標の実績については令和4年3月末見込み数です。 T「文字情報の利用が困難な人」の読書・情報環境の充実について  成果指標:新規利用登録者数  実績 255人  視覚障害,高齢,病気その他の障害等で読書が困難な人は県内にも数万人規模で存在し,多くの人が録音図書等のバリアフリー図書やサービスの存在を知らず読書をあきらめている状況にあると考えられます。  そのため,第1期サービス計画では,多くの読書困難者に利用してもらえるようにサービスの周知や利用しやすいサービスの創設など,利用者拡大を最重点課題として取り組みました。 1 取組について  オーテピアでは,図書館機能においてオーテピア高知図書館(以下「高知図書館」という。)と声と点字の図書館併設のメリットを活かし,両館が相互に補完・連携・協力して読書が困難な人へサービスを提供しています。   (1)役割分担と連携協力 @ 声と点字の図書館 ・所蔵資料:点字図書の他,録音図書,マルチメディアデイジー図書等の著作権法により利用者が限定されるバリアフリー図書  ・サービス:前記資料に関するサービス A 図書館 ・所蔵資料:大活字本,LLブック,布の絵本,さわる絵本等の利用者が読書困難者に限定されないバリアフリー図書 4ページ ・サービス:前記資料に関するサービス及び所蔵資料の利用に係る障害者サービス B 連携・協力  ・読書困難者サービス利用登録は両館共通様式を使用し,両館で登録(情報共有)  ・対面音訳サービスは共同で実施  ・PR,出前講座,出前図書館等を共同で実施 など (2) 開館時の取組 @ 紹介・展示コーナー  様々なバリアフリー図書やサービスがあることを知ってもらうために,声と点字の図書館は,誰もが気軽に入れるように1階エントランスホール正面に配置し,各種バリアフリー図書や視覚障害者用福祉機器を展示,体験できるようにしました。  写真:声と点字の図書館閲覧室(入口と内部)〔写真、終わり〕    A 録音図書再生機貸出 録音図書を利用するための機器(録音図書再生機・タブレット)を購入し,長期貸出サービスを開始しました。 B アウトリーチサービスの充実 ・電話,ファックス,メールで利用登録 ・訪問しての再生機貸出,操作指導 ・視覚障害者への点字,録音図書郵送サービスの他,視覚障害者以外の来館困難者についてもUSBメモリによるデイジー図書データ郵送サービス(普通郵便で送付。切手を貼付した返却用封筒を同封) を開始しました。 5ページ  資料「開館時のオーテピア”読書”バリアフリーサービス案内」  内容:声と点字の図書館と高知図書館のバリアフリー図書とサービスの紹介 (3) 開館後の新たな取組 @ さくらバリアフリー文庫(令和元年度から)  特別支援学校,福祉施設,医療機関,市町村図書館へのバリアフリー図書や再生機のセット貸出を高知図書館と共同で開始しました。 A 眼科医療機関・視覚障害関係機関との連携・協力(令和元年度から)   (詳細 11ページ) B 読書バリアフリーサービス基礎講座(令和2年度から)   読書バリアフリー法の施行に伴い,県内市町村図書館等における録音図書貸出などの読書バリアフリーサービスの実施をサポートする取組を開始しました。 (講座内容) ・県内市町村図書館等への出前講座 ・対象:図書館職員、図書館主管課・高齢障害福祉担当職員) ・内容:読書バリアフリー法とは? 読書困難者とは? バリアフリー図書とは? サービスの実際(サピエ図書館活用デモンストレーションなど) C 「バリアフリー図書のご案内」リーフレットの配布(令和2年度から)  県内市町村の協力により身体・知的・精神各障害者手帳の交付時に配布しています。   6ページ 資料「バリアフリー図書のご案内リーフレットA5:二つ折り 内容:「読書にお困りの方へ」のタイトルで,録音図書,マルチメディアデイジー図書の紹介や図書・再生機郵送サービスや訪問サービスを紹介 7ページ D 読書バリアフリー推進事業(令和3年度から)  読書バリアフリー法関連の国の補助事業「障害者ICTサポート総合推進事業」を活用し,新たに,携帯型デイジープレーヤー,マルチメディアデイジー再生用タブレットの貸出や郵送サービスの拡充など,読書困難者がより手軽にバリアフリー図書を利用できるサービスを開始しました。また,新たに,さわってわかる資料として,有名建築物の3Dプリンタ造形モデルの貸出も開始しました。 2 アンケート調査等 (1)バリアフリーサービスアンケート調査  次期サービス計画の策定に向け,高知図書館と声と点字の図書館による障害者サービスアンケート調査を実施しました。   実施時期 令和2年9月23日から10月13日 配布数:1,000部 回収数:610部 回収率:61.0% 特別支援学校,障害・高齢者福祉関係(団体,事業所)92か所を通じて調査を依頼 【主な傾向】  バリアフリーサービスの認知度について、「知らない」の割合が高く(69.3%)、サービス自体の認知度が低い。  バリアフリーサービスを利用しない理由の回答として、「図書館に行くことが難しい」「図書館を利用する必要がない」の順に多い(28.1%、14.9%)。  図書館利用に障害のある人の情報の入手方法の回答として、「テレビ」「家族・知人」「新聞・雑誌・本の購入」の順に多い(70.8%、62.7%、40.0%)。 【読書困難者について】  視覚障害を除く各種障害別の読書困難者の割合については,身体障害(24.9%),知的障害(37%),精神障害(30%)となっている。  障害者手帳を持っていない人における各年代別の読書困難者の割合は80歳代(57.5%),70歳代(46.8%),60歳代(15.4%)となっており,70歳以上の高齢者の約半数が読書に不自由さがあると回答している。 8ページ (2)利用登録者への聞き取り調査  令和元年度途中から,新規利用登録時に利用に至った経緯について聞き取り調査を行いました。 実施期間 令和元年度から2年度 聞き取り実施者 100名 【主な傾向】   利用登録に至る経緯について,医療・福祉・教育関係機関からの紹介(48%),オーテピアに来館して知った(19%),知人・家族等の紹介(14%)となっており,読書困難者と関わる機関(病院,施設,学校等)との協力・連携がサービスの利用促進に効果的である。 3 成果の評価と課題について 成果指標:新規利用登録者数  実績 255人 (1)成果指標(新規利用登録者数)について   視覚障害,高齢,病気,その他の障害で読書が困難な人は県内にも数万人規模で存在することが推定されます。しかし,録音図書等のバリアフリー図書の存在を知らないため,読書をあきらめている人が多くいます。こうした人達への読書機会の提供がサービス計画の重要課題であり,取組の成果を反映する毎年度の新規利用登録者数を成果指標としました。 (2)各年度における達成状況  開館2年目の令和元年度から開館年度実績を参考に毎年,翌年度の目標値を設定。  令和3年度は新型コロナ感染症による出前・訪問等の広報・PR活動の縮小を考慮し目標値を設定。 9ページ (  )内は(高知市:高知市以外)。令和3年度は見込み 平成29年度 目標値設定せず 新規登録者19人(12:7) 平成30年度 目標値設定せず 新規登録者85人(47:38) 令和元年度 目標値 90人 新規登録者 62人(39:23) 達成率 68.9% 令和2年度 目標値 90人 新規登録者 44人(24:20) 達成率 48.9% 令和3年度(見込) 目標値 60人 新規登録者 45人 達成率 75% 障害別内訳 平成29年度 視覚障害者 19人(12:7) 平成30年度 視覚障害者 47人(21:26) その他の障害 22人(16:6)   (肢体障害13,知的1,精神3,発達4,その他1) 読書困難 16人(10:6)   (高齢・眼病等14,読み書き困難2) 令和元年度 視覚障害者 27人(18:9) その他の障害 16人(9:7)   (肢体障害5,発達障害5,知的3,精神1,聴覚1,その他1) 読書困難 19人(12:7)   (眼病8,高齢5,長時間読書困難4,読み書き困難2) 令和2年度 視覚障害者31人(16:15) その他の障害 4人(3:1)   (肢体障害2,発達障害1,聴覚1) 読書困難 9人(5:4)   (眼病等4,高齢2,長時間読書困難2,読み書き困難1) 令和3年度(見込み) 視覚障害者 29人 その他の障害 8人 読書困難 8人 (3)評価・分析  平成30年度は,オーテピア開館にあわせ全県下的にPR・広報を行ったこともあり,通常年の3から4倍ほどの新規登録がありました。特に開館に併せて録音図書再生機の貸出及び視覚障害者以外の人への録音図書郵送サービスを開始したことで,今まで利用がなかった視覚障害以外の読書困難者の新規登録が増加しました。    開館後は,開館年度の実績をいかに維持・継続できるかが大きな課題でしたが,結果として,成果指標における目標達成率は,令和元年度は68.9%,さらに新型コロナ感染症の影響によりイベント,出前等の広報などの周知・PR活動が大幅に縮小した令和2年度は48.9%と大幅に低下することとなりました。 10ページ   令和2年度からは,コロナ禍における周知・PRとして県内市町村役場での身体・知的・精神障害者への手帳交付時の案内パンフレット配布を開始。また,さらに利用しやすいサービスをということで,機器操作の苦手な人も使いやすい録音図書再生機や,タブレット等の情報機器を持っていない家庭等でもマルチメディアデイジー図書を利用できるように,再生機・タブレットの貸出サービスなどのサービス充実に努めましたが,利用の大幅な増加にはつながっていません。    アンケート調査では,視覚障害以外の障害者においても読書困難者は一定数存在しており,さらに70歳以上の高齢者では半数が読書に不自由さを感じていることがわかります。また,サービスを知らない人が7割近くおり,サービスの認知度の低さを裏付ける結果となっています。なお,利用登録者への利用登録時に利用に至った経緯についての聞き取り調査では,医療・福祉・教育関係機関からの紹介が48%を占めており,読書困難者と関わる機関(病院,施設,学校等)との協力・連携がサービスの利用促進に効果的であると考えられます。 (4)課題  県内で録音図書等のバリアフリー図書を提供している図書館は少なく,数万人規模で存在すると考えられる読書困難者の少数の人しかサービスを利用できていません。したがって次期計画においても,「サービスを利用できていない多くの読書困難者をどうすればバリアフリー図書の利用などのサービスにつなげていくか」が引き続き当面の最重要課題となります。   11ページ  U 視覚に障害のある人の生活を支援する情報提供の充実について 成果指標:視覚障害に関する相談件数  実績877件       ※オーテピア開館時から実施。平成30年度から令和3年度4か年の実績    県内には約3,000人の視覚障害者(身体障害者手帳保持者)がいます。その他にも高齢や病気等による視覚機能の低下により,日常生活に不自由さを感じている人はさらに多いと考えられています。  声と点字の図書館では,これらの人たちが社会生活や日常生活をより便利で快適に送れるように,「見えない」「見えにくい」ことに関する当事者からの様々な相談や,福祉機器・情報機器の紹介・指導など様々な視覚障害者支援に取り組みました。 1 取組について (1) 見えない・見えにくいことの困りごと相談  「読みたい,書きたい」「こんなことで不便さを感じている」「福祉機器や助成制度について教えてほしい」「どこに相談してよいかわからない」など視覚障害者の様々な相談に対応しています。 (2) 視覚障害者用福祉機器等の展示・紹介  閲覧室には,音声ソフト入りのパソコンや,視覚障害機器展示コーナーを設け拡大読書器,音声時計,視覚障害者向け便利グッズなどを展示,紹介しています。     写真:音声パソコン,視覚障害機器展示コーナー〔写真、終わり〕 (3)ロービジョンケアネットワークへの参加協力  高知県眼科医会の進めるロービジョンケアネットワークに参加,協力し,関係機関と連携・協力して視覚障害者への支援を実施しています。 12ページ ・ロービジョンケアリーフレットの作成協力,ホームページ掲載等 ・眼科医療機関,ルミエールサロン,盲学校,高知市障がい福祉課とのネットワークを構築    ロービジョンケアとは?  ロービジョンケアとは,視覚に障害があるため生活に何らかの支障を来している人に対するすべての支援の総称です。  医療的なケアから教育的,職業的,社会的,福祉的,心理的ケアまで、広い範囲にわたる支援を意味しています。(日本眼科医会HP) 資料:ロービジョンケア紹介リーフレット(眼科で手渡し):A4用紙三つ折り 内容:高知家のいっぽ「見えにくくてお困りの方へ」。ネットワーク協力機関連絡先,困りごとのチェック欄などを掲載。 13ページ  視覚障害者向け機器展示室 ルミエールサロン  ルミエールサロンは、高知県子ども・福祉政策部障害福祉課が県立盲学校と連携して、盲学校内に設置している視覚障害者向け機器展示室です。見えない、見えにくいことによる日常生活の不便さを解消するための、様々な機器や便利グッズを展示しています。  ルミエールサロンにおいでいただいた方の必要に応じて、盲学校で教育相談を行ったり、盲学校での教育活動にルミエールサロンの専門スタッフ(視覚障害者生活訓練指導員)が協力をするなど、全国でも珍しい教育と福祉が連携した視覚障害者支援の場となっています。(ルミエールサロンHPより)  また,高知市を除く県内全域を対象に,歩行・日常生活訓練,福祉機器・情報機器の指導など訪問等による視覚障害者リハビリテーションを実施しています。 (4)ルミエールフェスタ(視覚障害者用福祉機器展示会)  ルミエールサロンと共催で,視覚障害者用福祉機器の展示及び便利グッズの販売会を毎年開催(令和2,3年度は新型コロナの影響で休止) (5)地元グルメ・イベント情報の発信  令和2年12月から県内地域情報誌「ほっとこうち」のグルメ・イベント情報をサピエ地域生活情報に掲載(毎月20本)   2 成果の評価と課題について 成果指標:視覚障害に関する相談件数  実績 877件 ※オーテピア開館時から実施。平成30年度から令和3年度4か年の実績 (1)成果指標(視覚障害に関する相談件数)について  視覚に障害のある人への支援には,必要とする様々な情報の提供や各種サービス実施機関等への橋渡しなど,見えない・見えにくいことで生じる様々な困りごとに対し,気軽に相談できる窓口としての機能が特に重要となることから,成果指標を「視覚障害に関する相談件数」としました。 14ページ (2)各年度における達成状況   ※令和3年度は見込み 平成29年度(統計なし) 平成30年度 目標値 設定せず 相談件数 129件 令和元年度 目標値 200件 相談件数 245件 達成率 122.50% 令和2年度 目標値 270件 相談件数 253件 達成率 93.70% 令和3年度(見込み) 目標値 270件 相談件数 (250)件 達成率 (92.5%) 内訳 平成29年度(統計なし) 平成30年度 図書利用 集計せず 読書情報機器関係 46 福祉機器相談 42 情報機器関係 26 福祉サービス 11 その他 4 合計 129 令和元年度 図書利用 63 読書情報機器関係 69 福祉機器相談 44 情報機器関係 28 福祉サービス 4 その他 37 合計 245 令和2年度 図書利用 54 読書情報機器関係 76 福祉機器相談 43 情報機器関係 58 福祉サービス 2 その他 20 合計 253 令和3年度(見込み) 図書利用 (30) 読書情報機器関係 (60) 福祉機器相談 (50) 情報機器関係 (80) 福祉サービス (10) その他 (20) 合計 (250) (3)評価・分析    毎年度目標をほぼ達成しました。  相談内容は読書・情報機器や福祉機器の相談が多く,福祉サービスなどについても一定のニーズはあると思われますが相談件数は少ない状況でした。 (4)課題  読書だけではなく,視覚に障害のある人の様々なニーズに応える情報提供のポータルとしての役割をさらに充実させていく必要があります。 15ページ V 県民・市民との協働による読書・情報サービスの充実について  成果指標:ボランティアによる図書製作数(タイトル数)  実績:点字図書 1,202 録音図書 350  テキストデイジー 8  マルチメディアデイジー 14    点字・録音図書などの障害者用複製図書は全国の点字図書館や公共図書館でボランティアにより製作されてきました。また,対面音訳サービスなど図書館,点字図書館で行っているサービスもボランティアの協力により実施されています。  読書や情報へのアクセスに障害のある人への理解や,ボランティア活動への参加促進に重点的に取り組みました。    1 取組について (1)読書・情報アクセス障害やボランティア活動への理解・啓発  ・バリアフリー映画(聴覚・視覚障害に配慮した字幕・音声解説付き映画)の上映会を毎年度開催  ・バリアフリー図書紹介やボランティア活動紹介パネル展示の実施 ・「親子で録音図書づくり」の開催 (2)各種サービスを支えるボランティアの養成・育成   毎年度点字図書,録音図書,デジタル資料製作ボランティアや対面音訳ボランティア養成講座を開催するとともに,ボランティアのスキルアップ講座を開催するなど各種ボランティアの養成,育成に取り組みました。 (3)図書製作スペースの設置    ボランティアが図書製作や勉強会など自由に使えるボランティアスペースや録音ブース,編集室など図書製作スペースを設置しました。 16ページ 2 成果の評価と課題について (1)成果指標:ボランティアによる図書製作数について 点字,録音図書等の障害者用複製図書(バリアフリー図書)は全国の図書館,点字図書館でボランティアにより製作されており,図書製作は声と点字の図書館の重要な機能であることから,成果指標を各種バリアフリー図書の製作数とします。 (2)各年度における達成状況  目標値は前年度末に個々のボランティアに年度の製作目標を立ててもらい,その合計を目標値に設定。テキストデイジー,マルチメディアデイジーについてはボランティアの養成・育成中につき参考値。 ※令和3年度は見込み 平成29年度 点字図書   目標値 設定せず  製作数 181 録音図書  目標値 設定せず  製作数 35 テキストデイジー  製作数 1 マルチメディア  製作数 0 平成30年度 点字図書   目標値 設定せず  製作数 201 録音図書  目標値 設定せず  製作数 44 テキストデイジー  製作数 1 マルチメディア  製作数 0 令和元年度 点字図書   目標値 設定せず  製作数 236 録音図書  目標値 設定せず  製作数 63 テキストデイジー  製作数 0 マルチメディア  製作数 0 令和2年度 点字図書   目標値 194  製作数 290  達成率 149.0% 録音図書  目標値 71  製作数 88  達成率 124.0% テキストデイジー  製作数 3 マルチメディア  製作数 4 令和3年度 点字図書   目標値 210  製作数 (294)  達成率 (140.0%) 録音図書  目標値 94  製作数 (120)  達成率 (127.7%) テキストデイジー  製作数 (3) マルチメディア  製作数 (10) (3)評価・分析  点訳図書,録音図書とも目標を超える製作数となりました。製作数も年々増加しています。テキストデイジー及びマルチメディアデイジーについてもボランティアの研修や勉強会を実施し,令和2年度からマルチメディアデイジー図書の製作も開始しました。 (4)課題  今後も現在の図書製作数を維持継続できるように,ボランティアの養成や活動支援に取り組んでいくことが必要です。 17ページ 第3章 計画の基本的な考え方           1 基本理念 すべての人を『本』の世界へ 「読書が困難な人」の生涯学習や文化活動,暮らしや仕事の中で起こる様々な課題解決を支援します。  誰もが同じように,読書や様々な情報を利用することができる社会の実現に寄与することを目指します。    人は生きていくうえで様々な知識・情報を必要とします。知識や情報はその多くが書籍や雑誌などの活字媒体により発信されています。また,今日ではインターネット上において,膨大な情報が流通しています。しかし,視覚障害,高齢,病気その他の障害など様々な理由で,これらの情報を効果的に利用できない人が多く存在します。    令和2年に制定された読書バリアフリー法について,内閣府の「令和2年版 障害者白書」には次のように記載されています。 【第4章 第2節 障害のある人の情報アクセシビリティの向上】  読書は、教養や娯楽を得る手段のみならず、教育や就労を支える重要な活動であり、障害の有無にかかわらず全ての国民が読書することのできる環境を整備していくことが求められている。しかし現実には、視覚障害者等が利用可能な書籍等はいまだ少なく、図書館におけるサポートも十分ではない。 18ページ  こうした背景を踏まえ、2019年通常国会において「読書バリアフリー法」が成立し、2019年6月28日に施行された。この法律は、障害の有無に関わらず、全ての国民が等しく読書を通じて文字・活字文化の恵沢を享受することができる社会の実現に向けて、視覚障害者等の読書環境の整備を総合的かつ計画的に推進するものである。    声と点字の図書館では,読書バリアフリー法が制定される前の第1期サービス計画策定時(平成29年3月)において,「文字情報の利用が困難な人の生涯学習や文化活動,暮らしや仕事の中で起こる様々な課題解決を支援」し.「誰もが同じように,読書や様々な情報を利用することができる社会の実現に寄与することを目指す」ことを基本理念とし,さらにリニューアルオープン時(平成30年7月)に施設のキャッチコピーとして「すべての人を『本』の世界へ」を掲げ,県内の読書が困難な人への読書・情報環境の向上に努めてきました。しかし,現在もバリアフリー図書やサービスの存在を知らず読書をあきらめている人が多くいます。    次期サービス計画では,施設のキャッチコピーである「すべての人を『本』の世界へ」を従来の基本理念のタイトルに加えるとともに,「文字情報の利用が困難な人」をわかりやすく「読書が困難な人」に改め,高知県内のすべての障害,高齢,病気など様々な理由で読書が困難な人も読書を楽しめる高知県を目指し取組を進めます。 読書が困難な人とは? 以下のような様々な理由により読書が困難な人のことをいいます。 長時間集中して読むことができない 視覚障害(全盲、ロービジョン)、高齢、眼病など 活字をそのままの大きさでは読めない 視覚障害(ロービジョン)、高齢、眼病、精神・発達・高次脳機能障害など 文字や文章を認識・理解することが難しい 高齢、知的・発達(特に学習障害)・高次脳機能障害、聴覚障害(手話母語)など 本を持つことやページをめくることが困難  上肢障害、障害・高齢等で寝たきり、脳出血等によるまひなど その他本をそのままでは利用できない 19ページ  2 基本方針    第1期サービス計画では,基本理念を実現するために3つの基本方針を掲げ取組を進めることとしました。第2期サービス計画においても前計画と同様に次の基本方針により取組を進めていきます。 T 読書が困難な人の読書・情報環境の充実   読書バリアフリー法に基づき「読書が困難な人」が,知識・情報の中核的な媒体である書籍や雑誌その他の文字による情報を利用することができるように,障害等に配慮した多様な図書や機器・設備等を整備するとともに,利用者のニーズに応えるサービスを提供し,誰もが「読みたい本を読める」「知りたい情報を知ることができる」読書・情報環境の充実を目指します。 U 視覚に障害のある人の生活を支援する情報提供の充実  「声と点字の図書館」は,身体障害者福祉法の社会参加支援施設「視覚障害者情報提供施設」としての役割も担っています。 「見えない」「見えにくい」ことで不自由さを感じている人の自立した生活を支援する情報提供の充実を目指します。 V 県民・市民との協働による読書・情報サービスの充実  利用者の様々なニーズに応えるサービスを提供していくためには,多くの県民・市民の皆さんの協力が必要不可欠です。  読書や情報へのアクセスに障害のある人への理解と,それを支援するボランティア活動を促進し,県民・市民との協働によるサービスの充実を目指します。 20ページ 3 計画の推進のために    声と点字の図書館では,開館以来,共生社会実現の重要なキーワードである「ダイバーシティ(diversity)」(多様性),「インクルージョン(inclusion)」(包摂。すべてを包み込む⇒誰もが排除されない)を意識し,オーテピアが読書に障害のある人も排除されることのないインクルーシブな施設となるよう取組を進めてきました。    オーテピア開館告知ポスター(一部)    高知市障害者・障害児福祉計画では,基本理念を「障害の有無にかかわらず,市民一人ひとりが互いに支え合い,いきいきと輝いて暮らせるまちづくりのために,お互いに理解し,人格と個性を尊重し合いながら,住み慣れた地域で安心して暮らせる共生社会の実現を目指します。その社会の中で,障害のある人が自己の能力を最大限に発揮し,夢や希望を実現するための支援体制の構築を目指します。」としています。   共生社会とは?  共生社会とは、人間は一人ひとりがすべて異なる存在であり、この違いをかけがえのないものとして受けとめ、互いが理解し合い、共に生きる社会をいいます。 21ページ   また,高知市では総合計画において施策や事務事業実施にあたって,積極的にSDGsの達成に貢献していくこととしています。「誰一人取り残さない」というSDGsの理念は,声と点字の図書館の基本理念である「すべての人を『本』の世界へ」という読書バリアフリーの取組と目指すべき方向性は一致しており,特にSDGsの掲げる17のゴールのうち「ゴール4 すべての人に質の高い教育を」,「ゴール10 国内及び各国家間の不平等を是正する」「ゴール16 平和と公正をすべての人に」にも該当していることから,声と点字の図書館ではSDGs達成にも取り組んでいきます。    SDGsとは?  持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)とは(中略)2015年9月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された,2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。17のゴール・169のターゲットから構成され,地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを誓っています。(外務省HPより) 第2期サービス計画を推進するにあたっては,共生社会の実現やSDGsの推進に寄与できるよう,次の点に留意し取組を進めます。 (1)読書バリアフリーは共生社会実現の重要な基盤  前述の内閣府の「障害者白書」で「読書は、教養や娯楽を得る手段のみならず、教育や就労を支える重要な活動」と記載されているように,知識や情報へのアクセスを保障する読書バリアフリー社会の推進は,障害のある人が社会のあらゆる分野に効果的に参加するための重要な基盤となるものであり,さらに「障害のある人が自己の能力を最大限に発揮し,夢や希望を実現するためにも必要不可欠なものであると考えます。  また,読書バリアフリーによる読書が困難な人の書籍等への情報アクセス向上は,質の高い教育の確保,情報の不平等の是正や公正さの確保にもつながっていきます。 22ページ (2)エンパワーメントを意識した取組を  わが国では,障害のある人への支援は年金等の所得補償や生活介助などが中心となっています。もちろんこうしたサービスは障害のある人が生きていくためにとても重要なサービスです。しかし,単に「生存」するだけではなく,「その人が社会の中でしっかりと居場所を確保し,自分らしく生きていける」,そのために役に立つ施設になりたいと考えています。  障害のある人の社会参加の促進や自己実現など,その人が自分の人生を生きていくことを応援し,少しでも力になれるように「エンパワーメント」を意識し,様々なサービスや取組を進めていきます。   エンパワーメント(empowerment、エンパワメントとも)とは?  エンパワメント(湧活)とは、人びとに夢や希望を与え、勇気づけ、人が本来持っているすばらしい、生きる力を湧き出させること。 23ページ 第4章 サービス・取組について T「読書が困難な人」の読書・情報環境の充実  取組の方針:「みんなでつなぐ 読書バリアフリー!!」    県内には,約3,000人の視覚障害者(身体障害者手帳保持者)がいます。高齢や病気等で通常の活字サイズでの読書が困難な人や,上肢障害,寝たきり,知的障害,学習障害などのために書籍等の利用が困難な方はさらに多く,「読書文字情報の利用が困難な人」は県内においても数万人規模で存在すると考えられ,今後,高齢化の進展に伴い,さらに増加することも見込まれます。  これらの読書や情報へのアクセスに障害のある人の読書・情報環境をいかに充実させていくかが,第2期サービス計画においても最重要課題であると考えています。  これまで声と点字の図書館では、高知図書館と連携しながらバリアフリーサービスの提供を行ってきましたが、第1期サービス計画期間中の新規登録者は約250人程度(見込み)にとどまっています。    読書バリアフリー法では,地方公共団体でも公立図書館等においてバリアフリー図書の充実や利用の支援などの体制整備を推進することが規定されており,今後は,県内全域の公立図書館等でも読書が困難な人へのサービスが実施されるように,県内市町村図書館等との連携・協力にも積極的に取り組む必要があります。  また,ほとんどの人がバリアフリー図書やサービスの存在を知らない現状において,読書が困難な人をバリアフリー図書やサービス利用につなげていくためには,読書困難者が多くかかわる医療・福祉・教育関係の施設・機関等の連携・協力も不可欠となってきます。    第2期サービス計画では,サービス充実はもとより,公立図書館等への支援や医療・福祉・教育関係の施設・機関等の連携・協力など,県内の読書困難者の誰もがサービスを利用できるよう関係機関等とのネットワークの構築による「みんなでつなぐ,読書バリアフリー!!」を推進します。 24ページ  1 読書バリアフリーサービス  声と点字の図書館では,子どもから高齢者まで,様々な理由で読書が困難な人が本の内容にアクセスできるように工夫した様々な形式の本(バリアフリー図書)を提供することにより読書を支援します。  また,読むために必要な読書機器の貸出や,障害や遠方などで来館困難な人も利用できるように,電話等での利用登録・貸出申込,読書機器や図書の郵送・宅配サービスなど,県内どこでも誰もが手軽に読書を楽しめるサービスを実施します。 (1)読書のカタチを選べます!「バリアフリー図書」 @ 録音図書(声の本)  活字図書を音声で読み上げて,録音した図書です。視覚に障害がある人,高齢や病気などで小さい文字を読むことが難しい人,寝たきりや上肢(腕や手指)に障害があるため本を手に持つことやページをめくることが難しい人,知的障害や学習障害のため文字や文章の認識が困難な人など,様々な文字情報の利用が困難な人が利用できる図書です。  デイジー(※)というデジタル規格で製作されており,長時間録音が可能なため長編小説も1枚のCDに収録でき,読みたい章や節,指定のページに飛ぶことができるなど,障害のある人が利用しやすい図書です。   デイジー(DAISY)とは?  Digital Accessible information systemの略。  活字図書を読むことに障害がある人が利用しやすいデジタル図書の国際標準規格です。音声,テキスト,マルチメディア(画像・文字・音声)など各種のデイジー図書が開発されています。 25ページ A 点字図書など(さわって読む本) 活字図書を点字に打ち直した本です。さわってわかるように凹凸をつけた地図や絵本などの図書もあります。   ○点字図書 ○さわる絵本・点字絵本   B マルチメディアデイジー図書 音声サポート付きの電子書籍。パソコン,タブレットを使って,音声を聞きながら,本の画像や文字を見ることができる図書です。読んでいるところがハイライトされるので,文字を読むことが難しい人もわかりやすく読めます。文字や画像を拡大することもできます。 Cテキストデイジー図書 活字図書の文字情報をテキストデータ化した本です。パソコンの音声読み上げソフト(スクリーンリーダー)を使って文字を音声で読むことや,文字を拡大して読むことができます。 D 触察3Dモデル貸出  さわってわかる資料として,有名建築物(タージマハル,原爆ドーム,サグラダ・ファミリア,国会議事堂などの有名建築物13種26点)の3Dプリンタ造形モデルを貸出。  ※3Dモデル提供:大学入試センター南谷准教授「触察3Dモデル提供サービス」 26ページ E 電子雑誌閲覧サービス(Kono Libraries)  高知図書館と共同でトライアル導入中の電子雑誌の読み放題のサービスです。従来,音声読み上げ等ができなかったPDFタイプの電子雑誌を通常の閲覧モードのほかに,AIで自動解析して,webテキスト形式での情報に変換した閲覧モードを提供しており,読書が困難な人も利用できるアクセシブルなコンテンツです。今後,トライアル後の正式導入について検討します。 【特徴】 ・音声読み上げ,文字拡大,白黒反転などのアクセシビリティ機能を搭載 ・台湾,香港,アメリカなどの雑誌も多数 ・多文化サービス活用(翻訳機能を使って日本語⇔外国語) ・記事の全文検索機能 (2)読書機器の貸出サービス @録音図書再生機の貸出  録音図書はデイジーの規格で製作されているため専用の再生機が必要です。再生機は高額であり,また重度の視覚障害者しか公的な助成制度(障害者日常生活用具助成制度)がないため,多くの読書困難者は個人購入が困難です。多くの人に録音図書を利用していただくため,録音図書再生機を貸出します。  (録音図書再生機) (携帯型録音図書再生機)   Aマルチメディアデイジー図書再生用タブレットの貸出  学習障害や知的障害で読書困難な人に有効なマルチメディアデイジー図書は,タブレット端末での利用が便利ですが,タブレットをお持ちでない家庭も多い状況です。マルチメディアデイジー図書再生用タブレット端末を貸出し,読書が困難な児童の幼少期からの読書習慣形成をサポートします。 27ページ  (3)宅配・郵送サービス @重度視覚障害者への点字図書、録音図書郵送   Aデイジー図書データ(USBメモリ)郵送サービス  重度視覚障害者以外の方にもデイジー図書を自宅へ郵送します。(送付・返送とも無料)   B 携帯型録音図書再生機,タブレット,3Dモデル郵送・宅配サービス  障害や遠方で来館困難な方も利用できるように,携帯型録音図書再生機,タブレットについては、貸出図書データの入った本体をご自宅へ郵送・宅配します。(送付・返送とも無料) (4)ICT利用支援  インターネットやパソコン,スマートフォン,タブレットなどのICT技術の進展は読書が困難な人の読書・情報アクセスの向上に有効なツールとして期待されています。声と点字の図書館では様々なICT機器等の利用をサポートします。 28ページ @ サピエ図書館の活用サポート  サピエ図書館の登録や,パソコン,タブレット,スマートフォンでの利用方法の指導などサピエ図書館の利用をサポートします。    サピエ図書館とは?  インターネット上に開設された,全国の点字図書館,公共図書館,国会図書館が製作・所蔵する点字・録音図書,デジタル図書等の障害者用複製図書の共同書誌データベースです。音声デイジーデータ10万タイトル以上,点字データ23万タイトル以上がダウンロードできます。「読書が困難な人」は,サピエ図書館に個人会員登録することで,自分のパソコン,スマートフォン,タブレットで図書をダウンロードして利用することや,図書の貸出しの申し込みができます。 A 電子書籍の利用サポート  近年,電子書籍は音声読み上げ,文字拡大,文字が見やすいコントラスト設定など読書困難者が読みやすい様々なアクセシビリティ機能が搭載されるなど読書バリアフリーの推進に最も期待されている図書です。  Kindleなどの電子書籍サービスや前述のKono Librariesなどのアクセシブルな電子書籍サービスの情報提供や,タブレット,スマートフォンでの利用方法の指導を行います。また,購入を検討されている方には,お試し用の電子書籍閲覧用タブレットを貸し出すなど,電子書籍の利用をサポートします。 B 誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化への対応 国が策定した「デジタル社会の実現に向けた重点計画」(令和3年12月24日閣議決定)においては,「誰一人取り残されない,人に優しいデジタル化」を進めることが重点項目の1つとして掲げられており,国,地方公共団体,企業・団体,住民等が各々の立場で相互に協力する「皆で支え合うデジタル共生社会」の環境整備(高齢者,障害者,こども,在留外国人等へのきめ細やかな対応,デジタル推進委員の検討等)を進めることとしています。今後,障害のある人へのアクセシビリティ向上に資する様々な施策や,デジタル機器・サービスの開発等が期待されることから,そうした情報についての収集に努め,利用者への情報提供や機器の導入等を検討していきます。 29ページ (5)利用者個々のニーズに応えるサービスの充実  「文字情報の利用が困難な人」が読むことのできる点字,録音図書等に複製されている図書は,図書全体の一部でしかありません。複製されていない図書の読書や,図書以外の様々な文字情報の利用など,個々のニーズに応えるサービスを充実させていきます。 @ 対面音訳サービス  ボランティアが利用者と対面して,図書等を読み上げます。  オーテピア高知図書館の図書をはじめ,利用者の図書や雑誌,仕事や学習に関する資料,郵便物などのプライベート資料も読みます。  遠方等で来館が困難な方には,電話,スカイプなどで読むサービスも行います。 A 活字図書のメディア変換サービス(利用者の依頼による活字図書の音声化,点字化,テキスト化など)  オーテピア高知図書館と連携・協力して点字・録音図書等に複製されていない図書館所蔵資料を,点字,録音,テキストデータ,触図など,利用者が読める媒体に変換して製作します。利用者の図書や雑誌,仕事や学習,郵便物などのプライベート資料も同様に製作します。 (6)様々な障害のある人への読書支援を充実  バリアフリー図書の存在を知らず読書をあきらめている人が多くいます。障害などで「紙の本」での読書が困難なことで,本人も,そしてご家族など周りの人も「読書は無理・・・・」とあきらめているケースが多いのではないでしょうか。  声と点字の図書館では,読書機器の利用やバリアフリー図書の選定などに配慮し,様々な障害のある人にその人にあった読書スタイルを提供していきます。 《読書が困難な人の主な障害と対応方法》 ○視覚障害,高齢や眼病等のある人 ・「見えない」「見えにくい」ことで文字を目で読むことが困難 ・利用図書(点字図書,録音図書) ・中高年で眼病等により視覚に障害がある人(中途視覚障害者)が多くいます。点字を指で触って読むことはとても難しいため,ほとんどの中途視覚障害者が録音図書を利用しています。 30ページ ○知的障害・学習障害がある人 ・文字を読むことが困難,漢字やこみいった文章をうまく読めないなど ・利用図書(録音図書,マルチメディアデイジー図書) ・文字を音声で聞くことで本の内容がわかります。特に,マルチメディアデイジー図書は,絵や写真なども掲載されているため,絵本や図鑑なども,目で写真や絵を見ながら文章を音声で聞くことで本の内容がよりわかりやすくなります。 ○肢体不自由の障害のある人 ・上肢(腕・手・指)に障害があったり,寝たきりなどで本を手に持つことやページをめくることができない。 ・利用図書(録音図書,マルチメディアデイジー図書) ・録音図書再生機は簡単なボタン操作で利用できます。また,タブレットで録音図書やマルチメディアデイジー図書を読むことができます。タブレットは画面をタッチするだけで操作ができるので,重度の障害のある方も,まわりの人のサポートや,タブレットを操作しやすい位置に固定するなど,その人にあわせていろいろな工夫をすることで読書ができるようになります。    このほかにも,高次脳機能障害や知的障害と肢体不自由の重複障害のある人などもその人にあった様々な配慮を必要とします。  第2期サービス計画では,特別な配慮を必要とする人への利用支援について,支援方法の研修等を行うとともに,学校,医療機関,福祉施設,ご家族など,その人にかかわる方々とも協力しながら,より充実したサービスの提供を目指します。   31ページ 2 みんなでつなぐ 読書バリアフリー!! (第2期最重点項目) 県内全域の読書が困難な人の読書・情報環境を向上させるために・・・ これからの「高知県の読書バリアフリー」の実現に必要なこと ◎読書が困難な方が身近な地域で気軽にサービスを利用できる状況  →(1)市町村図書館等との読書バリアフリーサービス連携・協力 ◎読書が困難な人と図書館・声と点字の図書館とをつなげるしくみづくり  →(2)読書が困難な人が多く利用する施設等(福祉、教育、医療機関など)との連携・協力体制の構築    この2つが達成できて、はじめて潜在化している読書困難者がバリアフリー図書を手軽に利用できる状況になると考えます。  第2期サービス計画では,(1),(2)の実現に向け重点的に取り組みます。 (1) 市町村図書館等との読書バリアフリーサービス連携・協力 @ 市町村図書館への読書バリアフリーサービスに関する啓発・情報提供  読書バリアフリーサービス基礎講座の継続実施や,他県等の読書バリアフリーサービス実践事例などの情報提供を行い,市町村図書館でのバリアフリーサービス実施の必要性や職員のモチベーション向上を図ります。 32ページ A 市町村図書館等との読書バリアフリーサービス連携・協力体制の構築   県内の市町村図書館においては,人員体制や予算規模なども様々です。それぞれの実情に合わせて連携・協力の方法を協議し,各図書館等と声と点字の図書館が相互に協力・連携して地域の読書困難者へサービスを提供する体制の構築を目指します。  ・利用者用録音図書再生機・タブレット等の図書館への貸出  ・郵送サービス等の実施に係る連携・協力方法を検討 参考例(イメージ) サービス実施イメージ図 ※来館可能者(図書館)・来館困難者(声と点字)で役割分担した場合 図書館・声と点字の図書館が連携・協力して地域の読書が困難な方へサービスを提供 市町村図書館 ・録音図書貸出 ・広報、情報提供 ※各図書館の実情に合わせてサービスメニューを設定 オーテピア高知声と点字の図書館 ・郵送サービス ・読書機器操作指導  (録音図書再生機、PC、タブレット) ・点字、録音、マルチメディアデイジー図書貸出 ※図書館実施サービス以外を補完 地域住民(読書が困難な方) 来館可能な方→市町村図書館でサービス提供 来館困難な方→市町村図書館(紹介)→オーテピア高知声と点字の図書館でサービス提供 到達イメージ図の説明 みんなでめざそう!! 誰もが読める高知県 県内全域の市町村図書館が「読書バリアフリーサービス」を実施 活字図書での読書が困難な方へ→お近くの図書館にご相談ください。図書館があなたの読書をサポートします。 〔図、終わり〕 33ページ B 学校図書館との連携・協力  子ども時代の読書は「子どもが言葉を学び,感性を磨き,表現力を高め,創造力を豊かなものにし,人生をより深く生きる力を身に付けていく上で欠くことのできないもの(子どもの読書活動の推進に関する法律第2条)」です。読書が困難な子どもへの読書支援には,特別支援学校(学級)の学校図書館と連携・協力して取組を進めていくことが最も実効性が高いと考えています。  声と点字の図書館と高知図書館が共同で実施している各種バリアフリー図書や読書機器の団体貸出,出前図書館などを継続して実施するとともに,教職員の方と協力して,個々の子どもの個性にあわせて読書機器の選定や使用方法の指導などを行い,その子どもがより充実した読書活動を行えるよう支援します。 (2)読書が困難な人が多く利用する施設等(福祉、教育、医療機関など)との連携・協力体制の構築  第1期サービス計画の評価・分析においても既述したように,読書困難者のほとんどの人がバリアフリー図書やサービスの存在を知らない現状があります。また,知っていたとしても,障害などで利用申し込みの電話連絡も簡単ではない人もいますし,何より馴染みがない施設等に人は気軽に連絡しづらいなど,自らサービスを利用する行動を起こす人は少ないと考えられます。  新規利用登録時に行った「利用に至った経緯」についての聞き取り調査では,医療・福祉・教育関係の施設,関係者からの紹介が全体の48%を占めており,読書困難者が多くかかわる機関等との連携・協力が利用者拡大に極めて有効だと考えられます。  読書が困難な人が多く利用する施設等(福祉、教育、医療機関など)との連携・協力体制の構築に取り組みます。 34ページ  利用登録者への聞き取り調査 ・実施期間 令和元年度から2年度 ・聞き取り実施者 100名 登録経緯、人数の順に列記 オーテピアに来館して知った 19 福祉関係イベント等での出前図書館 4 知人・家族からの紹介 16 教育・福祉関係者等からの紹介 15 眼科・その他医療機関からの紹介 18 ルミエールサロンからの紹介 15 公共図書館からの紹介 5 新聞記事を見て 2 ホームページ 1 その他 5 合計 100 連携・協力体制の構築  読書困難者の発見と当館への紹介など,当事者をサービスにつなげるサポートを担っていただける協力機関を募集等により確保,拡大していきます。 〈想定する連携・協力機関〉 ○障害者支援施設,高齢者介護施設等 ○特別支援学校(学級) ○医療機関  医療機関等においては,前述のロービジョンネットワークによる眼科医療機関との連携・協力をさらに推進していくとともに,リハビリテーション関係の専門職団体等への広報・PR等を行い,様々な障害のある方の利用を促進します。     35ページ 図の説明 「みんなでつなぐ !読書バリアフリー!!」協力機関募集 読書が困難な方(障害・高齢・病気など) ↓ 読書が困難な方が利用する施設・機関等 ・障害,高齢者福祉関係 ・教育関係 ・医療関係 施設利用・サービス申込,受診時等に「紹介シート」記載 「読書に不自由さを感じていませんか?」 「バリアフリー図書を試してみませんか?」 「声と点字の図書館に紹介してかまいませんか?」 ↓ (紹介)紹介シート郵送(メール,ファックス等) ↓ オーテピア高知声と点字の図書館 ↓ (連絡・訪問) ↓ 読書が困難な方 《協力機関募集・登録》 案内送付 ↓ 説明会 ↓ 協力機関登録受付 ↓ 登録 (紹介シート,専用封筒,チラシ,ポスター等送付) 〔図、終わり〕 3 成果指標と達成目標  (1)成果指標(新規利用登録者数)について   視覚障害,高齢,病気,その他の障害で読書が困難な人は県内にも数万人規模で存在することが推定されます。しかし,録音図書等のバリアフリー図書の存在を知らないため,読書をあきらめている人が多くいます。こうした人達への読書機会の提供がサービス計画の重要課題であり,取組の成果を反映する毎年度の新規利用登録者数を成果指標とします。 (2)各年度の目標値  図書館,関係機関等の連携・協力体制を構築し,最終年度には新規利用登録者年間100人を目指します。 目標値 令和4年度 60人 令和5年度 70人 令和6年度 80人 令和7年度 90人 令和8年度 100人 36ページ U 視覚に障害のある人の生活を支援する情報提供の充実 取組の方針:気軽に相談できる情報提供の窓口に!  人は,視覚,聴覚,触覚,嗅覚,味覚などによって必要な情報を得ていますが,そのうちの80%以上は,目(視覚)からの情報だといわれています。  県内には約3,000人の視覚障害者(身体障害者手帳保持者)がいます。その他にも高齢や病気等による視覚機能の低下により,日常生活に不自由さを感じている人はさらに多いと考えられています。  これらの人たちが自立した生活を送っていくためには,「見えない」「見えにくい」ことで生じる不自由・不便さを補う機器類や,生活を支援するサービス,周囲の人のサポート等が必要です。  しかし,視覚に障害のある人には,こうした各種の支援に関する情報自体が届きにくいため,必要なサービス等の利用や便利で暮らしやすい生活を支援する様々な情報の提供など,視覚に障害のある人への情報提供をいかに充実させていくかが課題となっています。    声と点字の図書館は,身体障害者福祉法の社会参加支援施設「視覚障害者情報提供施設」として,視覚に障害のある人が自立して生活を送れるよう,気軽に相談できる情報提供の窓口として福祉,医療その他様々な情報を提供していきます。 1 サービス・取組について (1)見えない・見えにくいことの困りごと相談  「読みたい,書きたい」「こんなことで不便さを感じている」「福祉機器や助成制度について教えてほしい」「どこに相談してよいかわからない」など視覚障害者の様々な相談に対応します。 (2)視覚障害者用福祉機器等の展示・紹介  視覚障害者が新製品や機器の更新など,視覚障害者に最新の機器等を展示紹介できるように努めます。 37ページ (3)ロービジョンケアネットワークへの参加協力  眼科医療機関と視覚障害支援関係施設が連携・協力し,視覚障害者支援の充実・促進を図る高知県眼科医会の進めるロービジョンケアネットワークに引き続き参加,協力し,視覚障害者への支援を充実します。 ネットワーク図 ネットワーク図説明 見えない・見えにくい人 @受診 ↓ 眼科医療機関) A紹介リーフレット手渡し ↓ B相談 どこに相談しても対応できるネットワーク型連携・協力体制 オーテピア高知声と点字の図書館( 読書・情報支援,相談,視覚障害支援情報提供等) ルミエールサロン( 視覚障害者リハ,福祉機器・サービス等相談支援) 高知市障がい福祉課( 視覚障害者リハ,福祉サービス等) 高知県立盲学校(教育,就労,相談等) ↓ Cニーズに対応した ・サービスの提供 ・適切な相談先紹介 ・対応情報を返信様式に記入し,本人へ渡す ↓ D対応情報 ↓ 眼科医療機関 お住いの市町村相談窓口とも相互に紹介 〔図、終わり〕 (4)視覚障害者等へのICT利用支援 @ ICT利用支援  視覚障害者及びその他の障害者に対し,スマートフォン,タブレット,スマートスピーカー,視覚障害者支援用アプリなどのICT機器の紹介や利用方法の指導を行います。また,購入を検討されている方には,お試し用の機器の貸出などを行い,視覚障害者のICT利用をサポートします。 38ページ A 誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化への対応(再掲) 国が策定した「デジタル社会の実現に向けた重点計画」(令和3年12月24日閣議決定)においては,「誰一人取り残されない,人に優しいデジタル化」を進めることが重点項目の1つとして掲げられており,国,地方公共団体,企業・団体,住民等が各々の立場で相互に協力する「皆で支え合うデジタル共生社会」の環境整備(高齢者,障害者,こども,在留外国人等へのきめ細やかな対応,デジタル推進委員の検討等)を進めることとしています。今後,障害のある人へのアクセシビリティ向上に資する様々な施策や,デジタル機器・サービスの開発等が期待されることから,そうした情報についての収集に努め,利用者への情報提供や機器の導入等を検討していきます。 (5)災害時の視覚障害者支援について  当館の加盟する点字図書館等の全国組織である全国視覚障害者情報提供施設協会や日本盲人社会福祉施設協議会においても災害時における視覚障害者支援については,全国共通の課題として認識されており,その中で点字図書館がどういった役割を担うかは重要な課題となっています。  前述の全国組織では災害時の視覚障害生活訓練指導員等の応援派遣なども検討されており,南海トラフ地震や豪雨災害などの大規模災害時における視覚障害者支援については,加盟組織での検討内容や,他の点字図書館等での取組も参考にしながら,県,市町村への協力,眼科医療機関や関係機関等との連携・協力など有効な支援方法について検討します。  また,災害時の視覚障害者への点訳,音訳等による情報支援について,点訳,音訳ボランティアの協力等についてもボランティアの皆さんとともに検討していきます。 (6) 視覚障害者向けイベント等の開催 ルミエールサロンと共同で開催しているルミエールフェスタの開催を始め,視覚障害者用福祉機器展示会,バリアフリー映画会,スポーツ体験会,文化講座,交流会など,利用者や来場者に役立つ,楽しんでいただけるイベント・講座等を開催します。 39ページ 2 成果指標と達成目標 (1)成果指標(視覚障害に関する相談件数)について  視覚障害者の支援には,必要とする様々な情報の提供や各種サービス実施機関等への橋渡しなど,見えない・見えにくいことで生じる様々な困りごとに対し,気軽に相談できる窓口としての機能が特に重要となることから,成果指標を「視覚障害に関する相談件数」とします。 (2)各年度の目標値  第1期サービス計画最終年度の目標値は年間270件でした。第2期サービス計画では年間300件を目標とします。   目標値 令和4年度 300件 令和5年度 300件 令和6年度 300件 令和7年度 300件 令和8年度 300件 40ページ V 県民・市民との協働による読書・情報サービスの充実 取組の方針:みんなで支える読書バリアフリー?  300人のボランティアの皆さんと一緒に  わが国では点字・録音図書などの障害者用複製図書は全国の点字図書館や公共図書館でボランティアにより製作されてきました。また,対面音訳サービスなど図書館,点字図書館で実施しているサービスもボランティアの協力により実施されています。「文字情報の利用が困難な人」の読書・情報環境はボランティアの力により支えられています。より充実した読書・情報サービスを展開するためには,今まで以上に多くの人の協力が不可欠となってきます。  声と点字の図書館には300名近くのボランティアが所属しています。しかし,全国的にはボランティアの新規参加者の減少や,高齢化などによるボランティア数の減少が課題となっています。  読書や情報へのアクセスに障害のある人への理解や,ボランティアの養成・育成など活動への参加の促進に重点的に取り組みます。    1 取組について (1)読書バリアフリーやボランティア活動への理解・啓発  「読書が困難な人」の読書・情報環境や,これらの人の読書を支えるボランティア活動について,県民・市民の理解を促進し,より多くの皆さんの協力・参加を目指します。  ・バリアフリー映画(聴覚・視覚障害に配慮した字幕・音声解説付き映画)の上映会を毎年度開催 ・「読書が困難な人」の読書・情報環境,点訳,音訳等のボランティア活動についての理解を促進するため,バリアフリー図書やボランティア活動を紹介する出前講座や出張展示,パンフレットの作成,その他様々な手段でのPR・広報活動を検討  ・声と点字の図書館の取組を知ってもらうため,これまでのホームページや新聞等によるPR・広報活動に加え,SNSを活用した情報発信等も検討 (2)各種サービスを支えるボランティアの養成・育成  毎年度点字図書,録音図書,デジタル資料製作ボランティアや対面音訳ボランティア養成講座や,ボランティアのスキルアップ講座を開催するなど各種ボランティアの養成,育成に取り組みます。 41ページ ボランティア登録者数(令和2年度末) 点訳ボランティア87人 音訳ボランティア84人 対面音訳ボランティア95人 デジタル資料製作ボランティア32人 2 成果指標と達成目標 (1)成果指標:ボランティアによる図書製作数について わが国では点字,録音図書等の障害者用複製図書(バリアフリー図書)は全国の図書館,点字図書館でボランティアにより製作されており,図書製作は声と点字の図書館の重要な機能であることから,成果指標を各種バリアフリー図書の製作数とします。 (2)各年度の目標値  目標値は毎年度個々のボランティアに年度の製作目標を立ててもらい,その合計を目標値に設定します。下表の目標値は第1期サービス計画最終年度の目標値を参考に記入した数値です。  (参考値) 点字図書 目標値 令和4年度 200 令和5年度 200 令和6年度 200 令和7年度 200 令和8年度 200 録音図書 目標値 令和4年度 90 令和5年度 90 令和6年度 90 令和7年度 90 令和8年度 90 テキストデイジー 目標値 令和4年度 10 令和5年度 10 令和6年度 10 令和7年度 10 令和8年度 10 マルチメディアデイジー 目標値 令和4年度 10 令和5年度 10 令和6年度 10 令和7年度 10 令和8年度 10 42ページ W 計画の実施及び点検・評価   この計画は,令和4年度から8年度までの5か年の取組の方向性を示すものです。  このため,個別の取組内容や実施時期は,本計画を基本とし,新たな課題や社会状況の変化を踏まえ,毎年度作成する「実施計画」により重点化と具体化を図ります。  計画の点検・評価については,「声と点字の図書館運営協議会」により行います。 43ページ 資料編                           資料編                           T 統計資料(平成29年度〜令和2年度) 1 登録者の状況 (1)登録者数(各年度末時点) ( )内は5年以上利用がない人を除いた人数 年度,高知市内,高知市以外,県内合計, 県外, 合計の順に記載 平成29年度 297人(216人) 180人(114人) 477人(330人) 92人(31人) 569人(361人) 平成30年度 342人(251人) 219人(153人) 561人(404人) 92人(26人) 653人(430人) 令和元年度 366人(276人) 238人(168人) 604人(444人) 90人(25人) 694人(469人) 令和2年度 382人(290人) 253人(182人) 635人(472人) 88人(21人) 723人(493人) ○県内市町村別登録者数 令和3年3月31日時点 圏域別,累計,実人数の順に記載 「実人数」とは, 5年以上利用がない人を除いた人数 高知市 382 290 安芸  室戸市 3 3  安芸市 14 11   東洋町 2 2  奈半利町 4 4    田野町 3 3  安田町 4 4  北川村 1 1  馬路村 0 0  芸西村 4 2  計 35 30 中央東  南国市 25 17  香美市 13 11  香南市 20 16  本山町 3 2  大豊町 0 0  土佐町 3 3  大川村 1 1  計 65 50 中央西  土佐市 18 14  いの町 18 14  仁淀川町 5 5  佐川町 6 5  越知町 8 4  日高村 22 9  計 77 51 高幡  須崎市 12 7  四万十町 8 7  梼原町 2 1  津野町 4 3  中土佐町 6 6  計 32 24 幡多  四万十市 13 9  宿毛市 10 6  土佐清水市 11 6  黒潮町 5 4  大月町 4 1  三原村 1 1  計 44 27 高知市以外 253 182 合計 635 472 44ページ 2 図書及び利用状況 平成29年度,平成30年度,令和元年度,令和2年度の順に記載 (1)貸出数(タイトル数) 点字図書 437 669 740 1080 録音図書 カセットテープ 141 392 338 320 録音図書 デイジー図書 6832 6334 6876 7207 録音図書 デイジー図書 コンテンツ提供 7158 10027 12197 12462 マルチメディアデイジー図書 マルチメディアデイジー 0 229 556 487  マルチメディアデイジー図書 コンテンツ提供(※) 0 4 4 28 ※「コンテンツ提供」は他館製作デイジー図書・マルチメディアデイジー図書のデータをサピエ図書館からダウンロードしての貸出し (2)サピエ図書館利用状況 平成29年度,平成30年度,令和元年度,令和2年度の順に記載 ○個人会員登録者数  登録者数 101人 119人 137人 145人 ○個人会員図書データダウンロード利用回数  点字データ  4858回 4409回 3396回 3538回  音声デイジー 23023回 23068回 27347回 29333回   テキストデイジー 1529回 1900回 2452回 3266回  マルチメディア 16回 43回 33回 45回 45ページ 3 ボランティア活動 (1) 登録ボランティア数 平成29年度,平成30年度,令和元年度,令和2年度の順に記載 点訳 96人 86人 87人 87人 音訳 87人 82人 87人 84人 ※対面音訳 77人 86人 99人 95人 ※デジタル資料製作 32人 40人 32人 32人  ※は、音訳,点訳ボランティアとの重複者あり。   (2)ボランティア養成講座受講者    (  )内は修了者数 講座定員,平成29年度,平成30年度,令和元年度,令和2年度の順に記載    点訳 15人  11(8)人 20(13)人  14(9)人  18(12)人 音訳 15人  14(12)人  22(18)人  12(11)人  16(12)人 デジタル資料製作 10 人 11(11)人 16(14)人  9(9)人  ※実施せず 4 対面音訳サービス ※平成30年度からはオーテピア高知図書館と合同実施 平成29年度 平成30年度,令和元年度,令和2年度の順に記載 実施数 473回 956回 1065回 653回 46ページ U 計画策定の経過 1.高知声と点字の図書館運営協議会  視覚障害,肢体障害等の読書困難者の関係団体,福祉,医療及び教育並びにボランティア活動等の関係者等で構成する高知声と点字の図書館運営協議会(以下「運営協議会」という。)で第2期サービス計画についての検討を行いました。 開催経過 開催年月日、検討内容の順に列記 第1回 令和3年11月17日 ・第2期サービス計画事務局素案の説明及び質疑 第2回 令和3年12月23日 ・第2期サービス計画事務局素案修正案の説明及び質疑 2.パブリックコメントの実施  第2期サービス計画の策定に向けて,計画案を広く市民の皆様にお知らせするとともに,ご意見を募集するためパブリックコメントを実施しました。 ・意見公募の期間 令和4年1月27日から2月26日まで ・提出情況:2名の方から5件 ・対応:2件のご意見について第2期サービス計画(案)を加筆・修正 47ページ V 読書バリアフリー法について 1.読書バリアフリー法 視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律(令和元年法律第四十九号) 目次  第一章 総則(第一条から第六条)  第二章 基本計画等(第七条・第八条)  第三章 基本的施策(第九条から第十七条)  第四章 協議の場等(第十八条)  附則    第一章 総則  (目的) 第一条 この法律は、視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関し、基本理念を定め、並びに国及び地方公共団体の責務を明らかにするとともに、基本計画の策定その他の視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する施策の基本となる事項を定めること等により、視覚障害者等の読書環境の整備を総合的かつ計画的に推進し、もって障害の有無にかかわらず全ての国民が等しく読書を通じて文字・活字文化(文字・活字文化振興法(平成十七年法律第九十一号)第二条に規定する文字・活字文化をいう。)の恵沢を享受することができる社会の実現に寄与することを目的とする。  (定義) 第二条 この法律において「視覚障害者等」とは、視覚障害、発達障害、肢体不自由その他の障害により、書籍(雑誌、新聞その他の刊行物を含む。以下同じ。)について、視覚による表現の認識が困難な者をいう。 2 この法律において「視覚障害者等が利用しやすい書籍」とは、点字図書、拡大図書その他の視覚障害者等がその内容を容易に認識することができる書籍をいう。 3 この法律において「視覚障害者等が利用しやすい電子書籍等」とは、電子書籍その他の書籍に相当する文字、音声、点字等の電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録をいう。第十一条第二項及び第十二条第二項において同じ。)であって、電子計算機等を利用して視覚障害者等がその内容を容易に認識することができるものをいう。 48ページ  (基本理念) 第三条 視覚障害者等の読書環境の整備の推進は、次に掲げる事項を旨として行われなければならない。  一 視覚障害者等が利用しやすい電子書籍等が視覚障害者等の読書に係る利便性の向上に著しく資する特性を有することに鑑み、情報通信その他の分野における先端的な技術等を活用して視覚障害者等が利用しやすい電子書籍等の普及が図られるとともに、視覚障害者等の需要を踏まえ、引き続き、視覚障害者等が利用しやすい書籍が提供されること。  二 視覚障害者等が利用しやすい書籍及び視覚障害者等が利用しやすい電子書籍等(以下「視覚障害者等が利用しやすい書籍等」という。)の量的拡充及び質の向上が図られること。  三 視覚障害者等の障害の種類及び程度に応じた配慮がなされること。  (国の責務) 第四条 国は、前条の基本理念にのっとり、視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。  (地方公共団体の責務) 第五条 地方公共団体は、第三条の基本理念にのっとり、国との連携を図りつつ、その地域の実情を踏まえ、視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する施策を策定し、及び実施する責務を有する。  (財政上の措置等) 第六条 政府は、視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する施策を実施するため必要な財政上の措置その他の措置を講じなければならない。 49ページ    第二章 基本計画等  (基本計画) 第七条 文部科学大臣及び厚生労働大臣は、視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する基本的な計画(以下この章において「基本計画」という。)を定めなければならない。 2 基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。  一 視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する施策についての基本的な方針  二 視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関し政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策  三 前二号に掲げるもののほか、視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項 3 文部科学大臣及び厚生労働大臣は、基本計画を策定しようとするときは、あらかじめ、経済産業大臣、総務大臣その他の関係行政機関の長に協議しなければならない。 4 文部科学大臣及び厚生労働大臣は、基本計画を策定しようとするときは、あらかじめ、視覚障害者等その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるものとする。 5 文部科学大臣及び厚生労働大臣は、基本計画を策定したときは、遅滞なく、これをインターネットの利用その他適切な方法により公表しなければならない。 6 前三項の規定は、基本計画の変更について準用する。  (地方公共団体の計画) 第八条 地方公共団体は、基本計画を勘案して、当該地方公共団体における視覚障害者等の読書環境の整備の状況等を踏まえ、当該地方公共団体における視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する計画を定めるよう努めなければならない。 2 地方公共団体は、前項の計画を定めようとするときは、あらかじめ、視覚障害者等その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるよう努めるものとする。 3 地方公共団体は、第一項の計画を定めたときは、遅滞なく、これを公表するよう努めなければならない。 4 前二項の規定は、第一項の計画の変更について準用する。 50ページ    第三章 基本的施策  (視覚障害者等による図書館の利用に係る体制の整備等) 第九条 国及び地方公共団体は、公立図書館、大学及び高等専門学校の附属図書館並びに学校図書館(以下「公立図書館等」という。)並びに国立国会図書館について、各々の果たすべき役割に応じ、点字図書館とも連携して、視覚障害者等が利用しやすい書籍等の充実、視覚障害者等が利用しやすい書籍等の円滑な利用のための支援の充実その他の視覚障害者等によるこれらの図書館の利用に係る体制の整備が行われるよう、必要な施策を講ずるものとする。 2 国及び地方公共団体は、点字図書館について、視覚障害者等が利用しやすい書籍等の充実、公立図書館等に対する視覚障害者等が利用しやすい書籍等の利用に関する情報提供その他の視覚障害者等が利用しやすい書籍等を視覚障害者が十分かつ円滑に利用することができるようにするための取組の促進に必要な施策を講ずるものとする。  (インターネットを利用したサービスの提供体制の強化) 第十条 国及び地方公共団体は、視覚障害者等がインターネットを利用して全国各地に存する視覚障害者等が利用しやすい書籍等を十分かつ円滑に利用することができるようにするため、次に掲げる施策その他の必要な施策を講ずるものとする。  一 点字図書館等から著作権法(昭和四十五年法律第四十八号)第三十七条第二項又は第三項本文の規定により製作される視覚障害者等が利用しやすい電子書籍等(以下「特定電子書籍等」という。)であってインターネットにより送信することができるもの及び当該点字図書館等の有する視覚障害者等が利用しやすい書籍等に関する情報の提供を受け、これらをインターネットにより視覚障害者等に提供する全国的なネットワークの運営に対する支援  二 視覚障害者等が利用しやすい書籍等に係るインターネットを利用したサービスの提供についての国立国会図書館、前号のネットワークを運営する者、公立図書館等、点字図書館及び特定電子書籍等の製作を行う者の間の連携の強化  (特定書籍及び特定電子書籍等の製作の支援) 第十一条 国及び地方公共団体は、著作権法第三十七条第一項又は第三項本文の規定により製作される視覚障害者等が利用しやすい書籍(以下「特定書籍」という。)及び特定電子書籍等の製作を支援するため、製作に係る基準の作成等のこれらの質の向上を図るための取組に対する支援その他の必要な施策を講ずるものとする。 51ページ 2 国は、特定書籍及び特定電子書籍等の効率的な製作を促進するため、出版を行う者(次条及び第十八条において「出版者」という。)からの特定書籍又は特定電子書籍等の製作を行う者に対する書籍に係る電磁的記録の提供を促進するための環境の整備に必要な支援その他の必要な施策を講ずるものとする。  (視覚障害者等が利用しやすい電子書籍等の販売等の促進等) 第十二条 国は、視覚障害者等が利用しやすい電子書籍等の販売等が促進されるよう、技術の進歩を適切に反映した規格等の普及の促進、著作権者と出版者との契約に関する情報提供その他の必要な施策を講ずるものとする。 2 国は、書籍を購入した視覚障害者等からの求めに応じて出版者が当該書籍に係る電磁的記録の提供を行うことその他の出版者からの視覚障害者等に対する書籍に係る電磁的記録の提供を促進するため、その環境の整備に関する関係者間における検討に対する支援その他の必要な施策を講ずるものとする。  (外国からの視覚障害者等が利用しやすい電子書籍等の入手のための環境の整備) 第十三条 国は、視覚障害者等が、盲人、視覚障害者その他の印刷物の判読に障害のある者が発行された著作物を利用する機会を促進するためのマラケシュ条約の枠組みに基づき、視覚障害者等が利用しやすい電子書籍等であってインターネットにより送信することができるものを外国から十分かつ円滑に入手することができるよう、その入手に関する相談体制の整備その他のその入手のための環境の整備について必要な施策を講ずるものとする。  (端末機器等及びこれに関する情報の入手の支援) 第十四条 国及び地方公共団体は、視覚障害者等が利用しやすい電子書籍等を利用するための端末機器等及びこれに関する情報を視覚障害者等が入手することを支援するため、必要な施策を講ずるものとする。  (情報通信技術の習得支援) 第十五条 国及び地方公共団体は、視覚障害者等が利用しやすい電子書籍等を利用するに当たって必要となる情報通信技術を視覚障害者等が習得することを支援するため、講習会及び巡回指導の実施の推進その他の必要な施策を講ずるものとする。 52ページ  (研究開発の推進等) 第十六条 国は、視覚障害者等が利用しやすい電子書籍等及びこれを利用するための端末機器等について、視覚障害者等の利便性の一層の向上を図るため、これらに係る先端的な技術等に関する研究開発の推進及びその成果の普及に必要な施策を講ずるものとする。  (人材の育成等) 第十七条 国及び地方公共団体は、特定書籍及び特定電子書籍等の製作並びに公立図書館等、国立国会図書館及び点字図書館における視覚障害者等が利用しやすい書籍等の円滑な利用のための支援に係る人材の育成、資質の向上及び確保を図るため、研修の実施の推進、広報活動の充実その他の必要な施策を講ずるものとする。    第四章 協議の場等 第十八条 国は、視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する施策の効果的な推進を図るため、文部科学省、厚生労働省、経済産業省、総務省その他の関係行政機関の職員、国立国会図書館、公立図書館等、点字図書館、第十条第一号のネットワークを運営する者、特定書籍又は特定電子書籍等の製作を行う者、出版者、視覚障害者等その他の関係者による協議の場を設けることその他関係者の連携協力に関し必要な措置を講ずるものとする。    附 則  この法律は、公布の日から施行する。 53ページ 2.読書バリアフリー法(概要) 視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律(読書バリアフリー法)概要 目的(1条) 視覚障害者等(=視覚障害、発達障害、肢体不自由等の障害により、書籍について、視覚による表現の認識が困難な者)の読書環境の整備を総合的かつ計画的に推進 障害の有無にかかわらず全ての国民が等しく読書を通じて文字・活字文化の恵沢を享受することができる社会の実現に寄与 基本理念(3条) ・アクセシブルな電子書籍等(デイジー図書・音声読上げ対応の電子書籍・オーディオブック等)が視覚障害者等の利便性の向上に著しく資することに鑑み、その普及が図られるとともに、視覚障害者等の需要を踏まえ、引き続き、アクセシブルな書籍(点字図書・拡大図書等)が提供されること ・アクセシブルな書籍・電子書籍等の量的拡充・質の向上が図られること ・視覚障害者等の障害の種類・程度に応じた配慮がなされること 国・地方公共団体の責務(4条・5条) ・国は、視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する施策を総合的に策定・実施 ・地方公共団体は、国との連携を図りつつ、地域の実情を踏まえ、施策を策定・実施 基本的施策(9条〜17条) @視覚障害者等の図書館利用に係る体制整備等(9条) ・アクセシブルな書籍・電子書籍等の充実 ・円滑な利用のための支援の充実 ・点字図書館における取組の促進 など Aインターネットを利用したサービス提供体制の強化(10条) ・アクセシブルな書籍・電子書籍等の利用のための全国的ネットワーク(サピエ図書館を想定)の運営への支援 ・関係者間の連携強化 など B特定書籍・特定電子書籍等の製作の支援(11条) ・製作基準の作成等の質の向上のための取組への支援 ※特定書籍・特定電子書籍等:著作権法37条により製作されるアクセシブルな書籍・電子書籍等 ・出版者から製作者に対するテキストデータ等の提供促進のための環境整備への支援 など Cアクセシブルな電子書籍等の販売等の促進等(12条) ・技術の進歩を適切に反映した規格等の普及の促進 ・著作権者と出版者との契約に関する情報提供 ・出版者から書籍購入者に対するテキストデータ等の提供促進のための環境整備に関する検討への支援 など D外国からのアクセシブルな電子書籍等の入手のための環境整備(13条) ・相談体制の整備 など E端末機器等・これに関する情報の入手支援(14条) F情報通信技術の習得支援(15条) ・講習会・巡回指導の実施の推進 など Gアクセシブルな電子書籍等・端末機器等に係る先端的技術等の研究開発の推進等(16条) H製作人材・図書館サービス人材の育成等(17条) ※地方公共団体は、Bのテキストデータ等の提供促進部分・C・D・Gを除き、国と同様に施策を講ずる。 文部科学大臣・厚生労働大臣が定める基本計画で具体化(7条)、地方公共団体は計画策定の努力義務(8条)、政府に対し、施策の実施に必要な財政上の措置等を義務付け(6条) 協議の場等(18条) 文部科学省、厚生労働省、経済産業省、総務省等の関係行政機関の職員、国会図書館、公立図書館、大学等の図書館、学校図書館、点字図書館、上記Aのネットワークの運営者、特定書籍・特定電子書籍等の製作者、出版者、視覚障害者等その他の関係者による協議の場を設ける等 施行期日:公布の日