令和５年度　第１回高知　声と点字の図書館運営協議会
日時：令和５年11月16日（木曜日）
午後３時30分から午後５時30分まで
場所：オーテピア４Ｆ研修室

出席者
委員長
高知県社会福祉協議会　常務理事　井上　達男
副委員長
高知県眼科医会　副会長　濱田　佳世
委員
有識者　元障害者支援施設長　上田　真弓
点訳ボランティア団体　高知ブライユの会　代表　小野　ちづる
高知県身体障害者連合会　視覚障害生活訓練指導員　金平　景介
高知県視覚障害者協会　会長　中島　正美
高知県立盲学校　校長　中野　直喜
高知県視力障害者の生活と権利を守る会　副会長　藤原　義朗
音訳ボランティア団体　高知朗読奉仕者友の会　会長　松田　光代
NPO高知県肢体障害者協会　副会長　松本　誠司

事務局
高知市健康福祉部　福祉事務所長　和田　秀幸
声と点字の図書館　館長　西岡　和美
副館長　都築　靖子
再任用副主幹　坂本　康久
　　　　　　　　
事務局関係機関
高知市教育委員会　市民図書館長　髙石　敏子
高知県教育委員会　高知県立図書館長　杉本　幸三
高知県子ども・福祉政策部　障害福祉課　課長　森木　博也
高知県子ども・福祉政策部　障害福祉課　チーフ　公文　貴代子

１　挨拶
事務局
福祉事務所長

２　委員紹介
各委員より挨拶

会長：議事に入る前に、委員からお礼を申し上げたいとのことです。委員、お願いします。

委員：この度、地域の視覚障害者の防災・減災ということについて考え、活動する中で、防災士の資格を取ろうと受験に臨みました。その際、400ページにもわたる教材テキストをデータ化するにあたり、点字図書館に多大なるご協力をいただきました。文字部分のテキストデータ化、ハザードマップの3D化などをしていただいたほか、他の関係機関のご協力もいただき、対面音訳でも力を貸していただきました。おかげさまで、80点の合格ラインのところ、無事100点で合格することができました。（会場拍手）
この合格は、点字図書館や他の方々のご助力なしには成しえなかったと思います。この場を借りまして、改めて感謝申し上げます。ありがとうございました。

会長：ありがとうございます。本当に素晴らしいことだと思います。このような方が、次々に県内から輩出されるようにしていきたいものだと思います。
さて、それでは議事に入ることにいたします。今回は、事務局から令和５年度の取り組み、中間報告についての議題が提案されておりますので、まずそれについて事務局からご説明をお願いします。

３　議事
令和５年度の取組み 中間報告
事務局より説明

会長：それでは、ただいまの事務局の説明に対しまして、委員の皆様からのご意見、ご質問をお願いいたします。

委員：インタビューシートに関して、事務局としては、せっかく説明に回ったのに数件の反応しかなく、しかも電話でというのは非常に少ないと思っているかもしれませんが、とりあえずは、満足の一歩なのではないかと思います。また、電話というのは有効な手段ではないかと思います。
さて、ここからは前回申し上げたこととも重複しますが、何事も、事例検討を通じて、こういう手があったか、こういうやり方があるのかという形で力をつけていくものです。副会長に後程ご発言をお願いしたいのですが、医師の世界では大学の夜のカンファレンスで研修医が様々な事例を発表し、それに対して常勤の先生が、そういう時はこのような方法があるということを答える形で医師が力をつけていきます。
それから、地域の包括ケア会議が事例を通して地域のシステムを考える機会ですが、高知市の地域包括ケア会議には視覚障害関係、情報障害関係の人はあまり入っていないですから、そこでは視覚障害者の情報問題が出てこないんです。高知市外ではルミエールさんも呼ばれている例があると思いますので、ひょっとすると、ルミエールさんには高知市外から相談があるのではないかと思っています。たとえば、高知市の包括ケア会議には点字図書館もルミエールさんもしっかりと委員として入る、情報障害の当事者団体の委員に入る、そういうシステムを望みたいと思います。
夜のカンファレンスについては副会長、ケア会議についてはルミエールさん、ご感想、ご意見をお願いします。

副会長：大学の夜のカンファレンスから離れて20年、30年と経ちますので、今、直接には携わっていないんですが、確かに、事例検討は、大学では普通に行われていることです。ですが、一般開業医、そういったところでは、みんなで集まって、こういう事例はどうだろうという話は正直ないですね。個別に、これはどうしたらよいかという話はもちろんするんですが、全員が集まって話をするというような機会は少ないです。
もちろん、こういう良いことが起きたという報告をする機会はあるんですが、そういう機会はロービジョンに携わる仲間の中で行われます。なので、逆に言えば、ロービジョンにあまり携わられていない先生方はそこにはいないというのがちょっと残念なところで、その仲間を増やすべく頑張ってはいるんですが、なかなか難しい状況です。ただ、こういう事例というのは、みんなが聞きやすい、分かりやすいものですので、そこに一般の眼科医が入ってくると、そういうこともあるのかと分かってもらいやすいことではあるので、たとえば、眼科医会のやっている会がありますので、そういうところでロービジョンの仲間と一緒にまたそういう報告をしたいと思いました。

委員：高知市以外の視覚障害者の訓練を担当していて、委員のおっしゃるように、支援会であるとかケア会議に呼ばれることが最近増えてきたかなと思います。そこでもちろん録音図書の利用のことであるとか、情報保障のことをお話しさせてもらって、そのケア会議に参加していた別のケースで相談を受けることもあるので、啓発の一環として参加しようと心がけています。
このことに関連して、４ページにある説明会をいろいろなところで開催して、新規の利用者が５人というのは素晴らしいなと思って、ぜひ続けてもらいたいと思います。母数がいったい何十万人いるのかは分かりませんが、ぜひ今回だけに終わらず、毎年どこかタイミングを見て続けてほしいなというのと、ぜひ高知市以外でも行って説明などしていただけたら、もっともっと県内広く拾えるのではないかなと思って、大変嬉しく思いました。

委員：今の話で、ケア会議に出ていた別のケースというのがキーワードなんです。これが事例検討で力をつけていくということなんですね。
あと、高知県のケアマネ協会の前の会長に聞いてみました。医師の方は夜のカンファレンスで頑張って勉強しているけど、ケアマネ協会はどうですかと聞くと、現場で支援していて、事例検討が良いのは分かるけど、なかなかそんな余裕がないと言っていました。ですので、本当はケアマネ協会の中で、情報障害の例ではこんな手があるよという風にやっていきたいところはあるけれども、なかなかできないので、高知市の地域包括ケア会議などで、こういう例にはこういうのがあると、ルミエールさんや点字図書館が入っていって勉強する場の体制を作る、そこで別の例で気づいて相談があると、そういう事例を積み重ねていただきたいと思います。以上です。

会長：ありがとうございました。
ちなみに、委員さんに確認させていただきたいんですが、先ほどケース会議に参加されるというお話がありましたけれども、それは高齢者の方のプランを検討する会議ということでしょうか？

委員：介護保険のプランの検討会議に行きます。障害のほうのケア会議には、そういえば出たことがないなと今思い当たりました。

会長：ありがとうございました。
私も、10年ぐらい昔に県の高齢者福祉課長をやっておりましたので、その当時は、地域ケア会議というのを高知県が全国の先頭に立ってやるぞぐらいの勢いでやっていたつもりだったんですが、どうしても介護保険ですので、要介護・要支援の状態の軽減とか、悪化の防止について議論していく場になります。すると、どうしても身体機能とか認知機能に関することが多くなり、保健や医療的なこと、福祉や支えあい、見守りをどうするかといった細かいことに分けられていくわけですけれども、そこに先ほど出た、文章を読み取る、読書をするということで生活の質を向上させるということが必ずあると思いますので、ぜひ啓発活動を続けていただきたいと思います。
こういうふうな形で、地域包括支援センターの会合においでいただいているということは非常に結構なことだと思います。先ほど委員からもありましたように、いろいろなところでの啓発活動ということになってくるかと思いますので、県の福祉保健所などにも声をかけるなどして、関係機関も巻き込みながらやっていただくようにしていただけたらどうかなと思い、申し上げました。
他に、ご意見、ご質問等ございませんでしょうか？

委員：新規申請のところに関しまして、令和５年からちょっと伸び悩んできているのではないかという気がいたしました。それでも、徐々に浸透していっているとは思いますが、まだまだ伸びる余地はあるのではないかと個人的には思っています。
それで、その中で視覚障害者の申請のほうが他の障害者より遥かに高いということで、バリアフリーの壁とは、それぞれの障害によって違ってくると思いますが、今回、視覚障害者にとっての読書バリアフリーとは何なのだろうと考えました。その時に、もちろん見えないということが壁になっているとは思うんですが、実はその前に、健常者の方であれば、好きな本を読みたいときには書店に行って本を購入するとか、図書館で本を借りるなどしてピンポイントで目的を達成することができますが、視覚障害者の場合には、そういったピンポイントで好きな本を読むという段階の前に壁があるということです。それは何かというと、音声デイジーなどを楽しむ場合に、そのための機器が必要だということです。たとえば、プレクストークだとか、リンクポケットだとか、パソコンだとか、そういった機器がなければ、音声を聞くことができない。で、そうした機器の操作方法がややこしいということです。たぶん健常者の方であれば、こんなことがなんでややこしいのと思うかもしれませんが、視覚障害者にとっては、まずここで電源を入れて、次にここを押してと指導されても、いきなり吸収するのは難しいのが現状なんです。ですから、こうしたデイジーなどで読書を楽しむためには、その前に、こういった機器の操作方法を着実に習得し、熟知する必要があります。もし読書に携わっていただきたいのであれば、こうした機器の操作方法を確実に覚えていただかなくてはいけません。ですので、私の要望としては、初めて機器に触れる視覚障害者は一時間や二時間の指導ではなかなか覚えきれませんので、そういう講義の時間を２回か３回取っていただき、根気強く指導を続けていただきたいということです。以上です。

会長：ありがとうございました。
大変大事な視点だと思います。図書館として、現在、操作方法の指導など、どのように取り組まれているのかご説明いただきたいと思います。

事務局：操作方法に関しましては、必ず利用者さんのところへお伺いしています。その時は必ず機械を持って行き、実際に触っていただいて、操作の説明をさせていただくようにしております。それで、もし継続的な訓練が必要な場合は、たとえば、高知市以外の方ですと、ルミエールサロンさんにお願いして継続的な訓練に入っていただくように手配をしたり、高知市内ですと、高知市の障がい福祉課に視覚障害者の生活訓練事業を担当する職員がおりますので、その職員に訪問を頼んだり、または、その職員の訪問が難しい場合には、声と点字の図書館の職員が出向いて行ったりといった形で対応をさせていただいております。
委員のおっしゃるように、やはり使いこなすまでにはなかなかご苦労されている方も多いので、今後もそういった方たちが読書を楽しんでいただけるように機器の使いこなし等、サポートをしていきたいと考えております。

会長：ありがとうございました。

委員：館長がおっしゃらないのでお伝えすると、私たちに図書の相談があったら、高知市以外であれば、どこでもオーテピアに丸投げすると言いますか、当事者の方には、図書館の職員さんが家まで来てくれるから、あとは安心して連絡を取ってくださいねと言ってお繋ぎすることが最近はすごく増えてきました。
その後もちろん、図書以外のことであれば継続して私たちが行くこともありますが、中村など、遠いところまで訪問してくださっているので大変助かっております。

会長：大変丁寧にご対応いただいていることがよく分かりました。
委員、よろしいでしょうか？

委員：先ほど根気強く教えていただきたいと申し上げたのは、指導する側と教えられる側の関係について、視覚障害者の側で教えられたその場では頭に入っているんです。ただ、メモなどができないと、口頭だけではすぐに忘れてしまうので、そういった面での根気強くということでした。また、指導法についても、たとえば、次回までの課題といった形で出されれば、教えられる側のモチベーションも上がると思うんですが。指導時間とか回数とかに目安はあるんでしょうか？
　
委員：何回でも行きます。何回でもと言うと多少語弊があるかもしれませんが、録音図書に限って言うと、録音図書の利用登録をしたいとか、プレクストークやその他の機器を使いたいといった場合には強い意志がありますので、割と一回や二回で覚える方が多いです。また、訪問する際には私たちは二時間一セットで考えていますが、訪問の帰りの車の中で電話がかかってくるケースなどは多々あります。先ほど宿題というような話が出ましたけれども、確かに自分がいない時にもやってくださいねといった形でお伝えすることもありますが、ただ録音図書に関して言うと、本を読みたい、これで大好きな小説が読めるという強い意志の方が多いので、わりと覚えるのは早い印象を持っています。
県の事業で私たちが行く時は、年間20回までというルールを決めていますが、それは歩行訓練や調理も含めて20回ということですので、録音図書だけで20回行った人というのはいません。

事務局：私も、視覚障害者の生活訓練指導員の資格を持っていて、訪問などもさせていただいているんですが、やはり委員がおっしゃったように、録音図書の再生機の説明だけで行った場合は、一時間から一時間半、二時間までで帰ってくるようにしています。また、声と点字の図書館の場合は、電話でも機器のボタンの役割などに関してお問い合わせをいただくことが多く、電話口で操作の支援や説明をさせていただいています。そういったやり取りを何回かして利用している利用者さんが多いです。また、電話では伝わりにくいような場合には、再度訪問させていただくなど、その方の状態に合わせた対応をさせていただくようにしています。
　
会長：ありがとうございました。他にございませんか？

委員：市町村図書館のバリアフリーサービスに関して、高知県内の市町村図書館のバリアフリーサービスには、地域間格差があるのではないかという点を懸念しています。本来、どの地域においても同じレベルの読書バリアフリーサービスが展開されるべきで、ひいては、それが利用者増に繋がるのではないかとも思います。昨年は香美市と香南市が頑張ったという印象ですけれども、そのあたりの点について、これまでの経緯と今後の展望のようなものがありましたら、ぜひお聞かせいただきたいと思います。

会長：非常に大事なことだと思います。
現在、第２期の計画が進行中ということで、声と点字の図書館、オーテピア、それぞれが一所懸命取り組んでいただいておりますが、市町村図書館を巻き込んだ新たな段階にそろそろ入っていく時期じゃないかと思うんです。折しも、県のほうでは読書バリアフリー計画の策定を進めている中で、そういった視点も大事ではないかと考えているところですが、事務局としてのお考えをお聞かせください。

事務局：委員さんのおっしゃる通り、オーテピアだけじゃなく、市町村図書館と協力し合いながらみんなで読書困難な人にサービスを提供できる、そんな高知県になればいいと思っています。
去年作りました第２期サービス計画でも、そのあたりの取り組みを頑張っていくということで、声と点字の図書館では、市町村図書館のバリアフリーサービスをスタートさせるための支援を行っておりまして、毎年10月頃に、「サピエ図書館への加入とか録音図書再生機やタブレットの貸し出しとか、そういったサポートをしますので、ぜひ、お互いに協力し合ってバリアフリーサービスを始めませんか？」といった案内を出しています。それで３年前から始まって、去年は香南市と香美市が手を挙げてくださいまして、サピエ図書館に加入して、録音図書やマルチメディアデイジー図書のサービスを始めてくれました。今年も、先ほど館長から報告がありましたように、三つの図書館が始めたいということで準備を進めているところで、安芸市さんはすでに始めています。今年もまた10月に市町村図書館のバリアフリーサービス支援のサポート事業ということで案内を出しまして、来年度も一カ所、サービスを始めたいと言ってくれている市があります。
このように市町村図書館と協力して読書バリアフリーサービスを広げていく取り組みを第２期サービス計画の重点項目にも挙げていますので、引き続き進めていきたいということで取り組んでいます。以上です。

高知県立図書館館長：今年度、読書バリアフリー計画の策定を進めている真っ最中でございます。少し取りまとめに時間がかかっておりますけれども、時間をかけて中身の充実したものにということと、県内でできるだけレベルの高い内容の計画に近づけるようにやっていきたいと思っております。県立図書館も中に入って県の障害福祉課を中心に計画を取りまとめておりまして、より良いサービスを実現できるような計画をと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

委員：報告を聞いて誇らしいような気持になりました。全国的に見て、高知の図書館が前を走っているのかなと思ったんですが、その辺りのお話をもう少しお聞かせいただけないでしょうか？

委員：もっと自慢してくださいということですね？（会場笑い）

事務局：読書バリアフリー法が二年前にできて、全国的な取り組みとして読書バリアフリー計画が策定されてきていますが、ただ、それによって利用者が劇的に増えたなどの事例はなく、一般の方々には読書が困難な人向けのサービスというのは周知されていないというのと、県立図書館レベルではサピエ図書館に加入して録音図書を提供するなどのバリアフリーサービスを行っているところもあるんですけれども、市町村図書館では二割ぐらいと言われています。そういうことで現実には進んでいないんですけれども、声と点字の図書館としては、今年、佐賀県で、２月には徳島県とかで先進事例として研修講師の依頼も頂戴するなど、頑張ってやっているところです。
また、録音図書の再生機に関しまして、ほとんどの方が持っていらっしゃらないというのが現実です。そこで、このオーテピアが始まった時に、どなたにでも録音図書をすぐに貸し出しできるように、録音図書の再生機やマルチメディアデイジーを再生するためのタブレットなどの読書機器も整備してサービスを始めました。それと、来館できない方のための郵送サービスとして、電話一本で、遠方の方や来館が困難な方にも録音図書などをお送りするサービスも始めました。こういったところが他の地域からご評価いただいているところではないかと思っております。
ですが、こういうサービスがあること自体、当事者や関係の方々にまだまだ浸透していないので、知ってもらって利用していただくという取り組みも併せて続けていかなければならないと考えています。以上です。

会長：ありがとうございました。他、いかがでしょうか？

副会長：高知県はオーテピアさんの取り組みによって録音図書を直接貸してもらえる体制ができているというところがとても素晴らしいところだというのを、ロービジョン学会とかいろいろな会の中で聞きます。確かに、利用者の人数が伸び悩んではいるんだと思うんですが、そもそもそこに届いていない都道府県が圧倒的に多いということを最近知りました。ですから、高知県はこういう仕組みができているだけで素晴らしいということを皆さんに言っていただけるわけです。ですので、ぜひこの取り組みを続けていけるようにお互い頑張っていきたいと思っています。

会長：ありがとうございます。
先ほど申し上げた福祉保健所との連携についてもそうなんですが、市町村の行政・役場の人、つまり予算をつけるところへの働き掛けも大事で、そこで予算を切られてしまうと、市町村図書館では手も足も出ないといったことも無きにしも非ずなので、ご苦労ですけれども、いろいろな場面をとらえて啓発に取り組んでいただきたいと思います。また、全部が全部、声と点字の図書館さんが抱え込むのではなく、人の手を借りながらやっていくような形でぜひ広めていっていただきたいなと思います。よろしくお願いします。
他、ございませんか？

委員：情報提供という形になりますけれども、先ほど生活技術的な問題が話題に上がっておりましたが、秋田視覚支援学校の３年生の課程に生活情報科という一年課程の科がございます。そこでは歩行や機器操作、いわゆる生活技術を一年間学びます。高知では、なかなかキャパ的に難しい面もありますが、一年とは言わなくても半年ほどかけて、どこか宿泊施設等を利用して生活技術を身に着けるような事業が行われれば、図書利用だけに留まらず、もっともっと広まっていく可能性があるのではないかと考え、他県の事例を紹介させていただきました。

会長：ありがとうございます。良い事例をご紹介いただきました。
これは、視覚障害のある方だけに特化した話のように受け止められがちですけれども、読書困難者には幅広い方がいらっしゃるわけです。肢体不自由の方もそうですし、読み書き困難の方、知的障害の方とか高齢者の方とか、本に触れ合う機会を逃している状況があるということです。資料の推計でも出していただいておりますけれども、それだけ皆さんの身近にある問題だということに気づいていただきたいなあと思うところです。よろしくお願いします。
他、いかがでしょうか？

委員：選書会の現状について教えてください。

事務局：選書会は現在、年３回実施しております。３月、７月、12月の３回です。選書委員ですが、利用者の方が３名、点訳ボランティアの方が２名、音訳ボランティアの方が２名で、計７名の方が選書委員として参加してくださっています。また、声と点字の図書館から司書が２名と、点訳・音訳それぞれの担当が参加しております。
この選書会ですが、一般図書は図書分類０類から９類まで各５タイトル、児童図書が５タイトルの計55タイトルを選書委員の方に選んでいただきまして、その中で得票数が上位の本を製作するという形になっております。あと、点訳・音訳は同じ本を製作します。ただ、選ばれた本でも、すでに他館が着手している場合もありますので、その時は選書数が変わるということになります。

委員：選書会が現在もきちんと運営されていることに安心しました。
読みたい本をどうすれば確実に読めるようになるのか、プライベートサービスはどうすれば受けられるのか、製作にどれぐらいかかるのかを明確にしていただきたいと思います。
また、製作される本に関して、高知県内で発行される本については優先的に高知で作っていただくような仕組みにしていただきたいと思います。以上です。

事務局：製作図書は、ボランティアの方々の手によって作られているわけですが、皆さん、読みたい本は様々で、正直申しますと、高知県のものばかり作れば、他の方からはもっと楽しいものも作って欲しいと言われるなど、希望が多岐に亘るからこそ、選書会で委員の皆さんに選んでいただいているという側面もあるわけです。ですから、個人、個人、すべての方のご希望に沿うのは難しいこともあって、選書会で利用者の方、ボランティアの方、そしてうちの職員も参加して、製作図書候補リストの中から、これを作った方がいいという、得票数の上位の本を作るということになっています。
また、そういった形でボランティアの方も一所懸命作ってくださっているわけなんですが、どうしても一年間に作れる本には限りがあります。そういう中で最大限、皆さんの希望に沿った本を作っていくということで、選書会という主体を持っています。
プライベートサービスは、個人の方の希望に沿ってボランティアの方に点訳・音訳・テキストデータ化してもらう制度ですが、最近、広報できていなかったので、新しく利用者になった方で知らない方もいるかと思います。また広報もしていかなければと思いました。ただ問題なのは、プライベートサービスの依頼が山のように来ると今度は一般図書の製作ができなくなるということもありますので、他の点字図書館では、プライベートサービスは一人あたり年５冊というふうに制限をかけているところもありますし、そこはボランティアの方とも相談しながらということになります。
そういうことで、どうしても、すべての方にご満足いただけないということはありますので、その点はご了承いただきたいと思います。

委員：利用者が選書会に挙げて選考から漏れてしまった本については、改めてプライベートサービスで製作するかどうかなどを尋ねていただきたいと思います。

会長：選書会の選考結果のフィードバックが欲しいとの提案が出されましたけれども、その点はいかがでしょう。

事務局：選考に洩れました場合のフィードバックはさせていただくことができますので、今後、取り組んでまいりたいと思います。

会長：ありがとうございました。その他、いかがでしょうか。

委員：私の所属する全国障害者問題研究会では、要望があれば、会の発行物を、視覚障害者向けにテキストデータで提供したりしています。出版業界が出版物のデジタルデータを提供することが当たり前になってくれば、ずいぶん変わるんでしょうが、たとえば、高知県立図書館、高知市民図書館が購入した図書に付いているテキストデータを点字図書館が加工して点訳、音訳などで利用することは可能なんでしょうか？

事務局：読書バリアフリー法ができて、本を買った視覚障害者の方から要望があれば、出版社がテキストデータを提供するという取り組みも進んでいます。ですが、それはあくまで個人向けに出版社から提供されたデータということになりますので、それを声と点字の図書館が活用するというのは難しいかもしれません。ただ、テキストデータがあれば、自動点訳ソフトで点字にしたり、合成音声で声を当てたりすることは技術的には可能ですので、現在、それを活用できる仕組みはできてはいないんですけれども、将来、人ではなく、機械で読んでいくといったような活用方法も発展していくんじゃないかと期待しています。

委員：点字図書館では出版社からデータはもらえないんですか？

事務局：もらえないですね。いつか、データが提供される公的な制度ができるかもしれませんが、今のところ、ちょっとそれは難しいと思います。

会長：テキストデイジーというのは、そういった関連のものではないのですか？

事務局：テキストデイジーとは、テキストデータをデイジーフォーマットに編集して障害のある方も読みやすいようにした障害者用資料になります。
現在の当館の作り方ですと、紙の本をすべてスキャナーで読み取って、それをテキストデータに変換するソフトを使ってテキストデータ化します。これがすべて機械化されているわけではなく、デジタル資料製作ボランティアの方に文字の修正などを行っていただいて、正確なテキストデータを作ったうえで、先ほど申し上げたデイジーのフォーマットに編集して完成させます。この完成したものをパソコンやタブレットなどにかけますと、パソコンやタブレットに搭載されているスクリーンリーダーという文字を音声化するソフトにより、音声で読むことができるようになります。
これの最大のメリットは、点訳や音訳が３か月、半年とかかるのに対して、一か月程度で一冊の本を仕上げることができますので、速やかに提供できるという点です。

会長：ありがとうございます。そのテキストデイジーを作ることが許されるのは、声と点字の図書館で購入した本だからということになるのでしょうか？

事務局：はい。これは出版社から提供されたものではなく、あくまで、当館が購入した紙の本を使って作ったテキストデータだからです。

会長：分かりました。ありがとうございます。
他、ございませんか？

委員：どうやったら取り組みを広めていけるかについていろいろと考えていたんですけれども、訪問看護の中に訪問リハというものがあります。訪問看護ですと、おもに身体にかかわるものになりますが、訪問リハを行う作業療法士の方達は障害者の在宅での生活にものすごくかかわりを持つ職種です。声と点字の図書館さんが啓発をしていく中で、こういった在宅リハに携わる職種の方から、在宅で本を読みたい人がいるが、どんな形でできるか教えて欲しいといった事例はこれまでありましたか？

事務局：無いと思います。

委員：作業療法士さんたちは在宅にいる利用者の方ともかかわりがありますから、協力してくれるのではないかと考えました。訪問リハは訪問看護の中にありますから、高知県の看護協会で訪問リハの研修のようなところに繋がれれば、在宅にいる方にも広められるのではないかと考えました。
　
会長：ありがとうございます。
そういう事例を積み上げていければいいですよね。貴重なご意見をありがとうございました。

委員：また別の質問になりますが、対面音訳に関して、現在の実施状況をお教えください。実施件数、実施方法についてお伺いします。

事務局：対面音訳の回数ですけれども、４月から９月までの上半期ですが、13人の方のご利用がありまして、533回の対面の回数がありました。対面時間は、午前、午後、夜間と分けておりますが、午前中が192回、午後が341回、夜間のご利用はありませんでした。
それから来館以外の方の対面利用ですけれども、携帯電話を使っての電話での対面音訳、フェイスタイムを利用されている方、スカイプでの利用の方というふうに分かれております。それぞれ、電話の方がお一人、フェイスタイムのご利用がお二人、それからスカイプが三人となっております。

委員：分かりました。引き続き、移動が困難な方にも対面サービスのPRをお願いします。また、そのような方々の資料はどうするのか、ファックスなどで送ってもらうのか、カメラなどにかざせば読んでもらえるのかなどについて教えていただけますか？

事務局：当日の資料につきましては、事前にどのようなものを読むかなどを利用者さんからリクエストをいただきまして、本の準備などについては高知図書館さんにお願いしているところです。そこの部分で資料は高知図書館さんから提供を受けているので、高知図書館と一緒にやっている事業がこの対面音訳サービスになります。
それで、手持ちの資料に関しては、たとえば、ファックスで送っていただくとか、あとは郵送というような形になるかと思います。そうすれば、電話やフェイスタイム、スカイプでも対応は可能かと思います。スカイプの場合、実はカメラの付いていないパソコンを使っておりますので、どうしても相手のお声しか聞こえない状態ですので、カメラ機能があるものを設置すれば、その場でも「これなんて書いてある？」といったことにも対応できるかもしれませんが、現在は対応が難しい状況です。

委員：たとえカメラでやったとしても、逆さになるので大変読みにくいのではないかと思います。

委員：それではやはり、ファックスを使用してということになるでしょうか。分かりました。
　
会長：他、どなたかございませんか？

委員：私が毎回この会議に出席して思いますのは、図書館と一般の方々との溝が非常に深いということなんです。図書館をほとんど利用したことがないという若い方には常々もったいないと申し上げているんですけれども、図書館のほうでも図書館が市民に根付いていくような施策が必要なのではないかと思うんです。たとえば、「オーテピアは私の書斎」と思わせるぐらいのものと言いましょうか、図書館と市民が互いに寄り添っていくような姿勢です。
また、新規利用登録者が５人というのもあまりにも少ないと思います。図書館の利用登録の勧め方として、図書館に来ると楽しいといったような勧め方は何かないのかという気がいたしました。

会長：すごくいいキャッチコピーをいただきましたが、確かにそのような形で距離を埋めていくような働きかけも重要だろうと思います。事務局、いかがでしょうか？

事務局：今回、この説明会に臨むにあたり、基幹型の包括支援センターに相談に参りましたところ、その中でお勧めのブックリストのようなものを準備してみたらどうかというアドバイスをいただいたんです。そうすることで、図書をもう少し身近に感じられるんじゃないかということでした。
そこで、それぞれ高齢者向けのブックリストと、子どもさん向けのブックリストを作りまして、説明会にはそれらのブックリストと、許す限りで、プレクストークなどの録音再生機や録音図書の現物も持っていき、支援者の方に実物を見ていただきながら事例もお話しさせていただいて、イメージを掴んでいただきやすいようにいたしました。
ですが、まだまだ力不足ですので、もっと楽しさを前面に出すように今後も考えて頑張っていきたいと思います。

委員：その際に、ぜひ参加型の会を開いていただきたいと思います。

会長：高知市さんで言えば、たとえば、市民グループやサークルの会などもあるでしょうから、そういったところへ情報提供をしておくというのも良いのかもしれません。そういうところから、うちのおじいちゃんにとか、お孫さんにとかいった形で広がりを見せることもあるかもしれませんし。ありがとうございます。

委員：3Dモデルについてお伺いします。今、高知県、特にオーテピアで技術的にどれぐらいのところまで製作可能になっているのかお教えいただけますか？
知人が3Dの気象図を見て感動していました。私もハザードマップを3Dモデルで見て感銘を受けました。どんどん3Dモデルができていることを期待しているんですが、どうでしょうか？

事務局：3Dモデルは、図書館では製作されておらず、科学館のほうでいろいろな物が作られています。
視覚障害者向けの触って分かる地図とか建築物のモデルなどについて言えば、大学入試センターの南谷教授の研究プロジェクトの協力ということで、声と点字の図書館に3Dプリンターをご提供いただいています。先日のルミエールフェスタの際、3Dモデルの体験会をさせていただきました。ただ、当館で製作できるものは、データがウェブサイトにあるものなどに限られまして、その他の地図や何かということになりますと、大学の研究室や専門的な機関でなければ、なかなか難しいというのが現状でして、当館独自で3Dモデルを製作することは難しい状況です。

委員：建築物など、触ってみたいものはたくさんありますので、希望する物を3Dプリンターで製作できるようになることを期待しています。

会長：時間も少なくなってまいりましたが、その他、ご意見等ございますでしょうか？

委員：新規利用に向けて、訪問するセラピストの方への啓発活動というのもぜひお願いしたいと思います。
先日も、市内の眼科でない科に行って、そこのドクターやセラピストの方とケース会議みたいなものを開く機会があって、その時に、録音図書の紹介をしたところ、皆さん感動していて、そのケース会議に挙がっていた方以外の方について、録音図書が良いのでは？という話も出ました。その方が実際に利用できるかどうかは図書館に問い合わせてみないとわかりませんという話をしたのと同時に、病院向けの貸し出しパックのようなものもありますよという紹介もしたので、先ほど話に出た高齢者向けブックリストや貸し出しパックのようなものはすごく良いと思いました。確か日本点字図書館でも、いくつか類似の、お勧めセレクトパックのようなものを出していたはずですので、ぜひ、点字図書館でも館長セレクトのようなものを作っていただき（会場笑い）、そういう形でも貸し出せる体制作りをしていただきたいと思います。
それから、委員の言われた図書好きを増やしていく活動もとても重要だと思います。一般県民・市民に向けて、高知図書館さんにもその点ぜひご協力いただきたいと思います。オーテピアにはSNSとして、Xも、フェイスブックも、インスタもあるんですよ、皆さん、登録されてますか？（会場笑い）私はすべて登録していますが、正直、見ていて面白くないんですよね。（会場笑い）ですので、その点ももう少し工夫していただければと思います。たとえば、見ていてとても良かった投稿として、「静寂読書室からの時計台が今日も綺麗です」というのに見事な写真が付いているものがありました。イベントの紹介ももちろん大事だと思いますが、こういうのが広がっていく一つのきっかけになるのではないかと思いましたので、ぜひ、若者の読書好きを増やす啓発にも引き続き力を入れていただきたいと思います。
最後に一つ質問ですが、サピエの着手情報というのは、どこかを見れば分かりますか？図書館に問い合わせないとだめでしょうか？

事務局：サピエ図書館で確認できるようになっています。アカウントがなくても検索できます。

委員：「この本ありますか？」とか、「いつできますか？」とか、そういう相談を受けたときに答えたいと思い質問しました。ありがとうございました。

会長：ありがとうございました。委員、何かご発言ございませんか？

委員：特にありません。

会長：ありがとうございます。
そろそろお時間も参りましたので、今回の議事は以上とさせていただきたいと思います。
最後に今回、その他といたしまして、「みなサーチ」の資料をお配りしておりますので、「みなサーチ」の状況について事務局より説明をお願いします。

事務局：私から、「みなサーチ」のご紹介をいたします。
「みなサーチ」は、サピエ図書館とほぼ同じような機能で、障害者用図書の検索もできますし、録音図書とか点字データ、マルチメディアデイジーデータなどもダウンロードできるシステムがあります。こちらは国立国会図書館が実施しているサービスで、その資料は、おもに公立図書館が作った資料になります。
サピエのほうは、点字図書館と公立図書館、国立国会図書館のサービスの両方が使えて、資料もそのままダウンロードできます。「みなサーチ」は、障害のある方でもアクセスしやすく、非常に検索しやすいホームページになっています。新たに作られたもので、現在、ベータ版ということで、どなたでもご覧いただけます。「みなサーチ」のホームページには、来年１月からの本格稼働を目指していると書いてあります。障害者用資料のデータベースとして非常に有効な手段になります。
また、図書館や施設がサピエ図書館に加入するには年間４万円の費用がかかりますが、「みなサーチ」は図書館や特別支援学校等が無料で加入してデータのダウンロードなどして、サービスを提供することができます。梼原町さんは、今年予算がつかなくてサピエ図書館に加入できなかったので、こちらの国立国会図書館のサービスを利用して、町としての図書館サービスを始めるということになりました。こういうサービスも活用して、図書館や特別支援学校等が資料の収集、提供ができるようになればということで、今回、ご紹介させていただきました。

会長：ありがとうございました。
それでは、お時間となりましたので、以上を持ちまして、本日の審議を終了させていただきます。ありがとうございました。